東京 消える生き物 増える生き物

日本にはいろいろな場所があり、場所によってはそこでしか見られない生き物も存在する。喧騒に囲まれた東京とて例外ではない。東京には高層ビル街の中で、あるいは池や住宅地の中でたくましく生きる生物もいる。本書は東京に住み着いた生き物、東京を狙う生物、東京で増え続ける生き物など「東京」と「生き物」にフォーカスを当てている。

第1章「大都会で生き残るには」
東京と言ってもいろいろとある。例えば多摩や小平と言ったところは自然豊かであり、伊豆大島と言った離島も存在する。しかし本書ではあくまで23区を中心とした都心部について取り上げている。
私は都心部にはすんでいないし、最近は全くと言ってもいいほど行かないのだが、毎日のように行っていた時はカラス、さらに夏場にはセミが結構いたことを覚えている。本章ではカラスの生存競争から、チョウやセミの生息について取り上げている。「自然が少ない」と言われている中でも生物はしたたかに生きていると言っても過言ではない。

第2章「東京を狙う来邦者」
簡単に言えば外来種の動物が東京にやってきて増殖しているものもある。原因として海外から鑑賞用ペットとして持ちこまれて捨てられた生き物もいれば、船などの貿易の際に、紛れ込んで日本に上陸してきた種類も存在する。本章ではハクビシンやブラックバスを中心に取り上げている。

第3章「しがみついた都心」
生物の中には都心のスタイルに合わせて変化を行い、生息することのできた種類も存在する。最たるものとしては東京ではよく見かける「キイロスズメバチ」や「ミンミンゼミ」と言ったものである。後者は夏場になると鳴き声がけっこううるさいことを思い出し、前者は襲われた事による死亡事故に発展することもよく聞く。

第4章「野生の王国・江戸」
では江戸時代の生態系はどうだったのか、江戸時代からの史料をもとに生態系の変化について調べているが、元々生物学が発達しているのかどうか疑わしいところもあるため、史料と現存する生物とで照らし合わせながら記載している。

第5章「それでも街は生きている」
経済が発展することにより、都市構造も同じくして変化する。さらに生物の構造も同様に変化をしている。それは都心でも同じである。しかし自然の変化の中でも招くべきものもあれば招かざるものもある。後者は自然破壊と言ったものかもしれない。

「都会」と言われる東京にも自然は存在し、かつ生物も存在する。それは自然の原理に基づいて、絶えず変化を行っている。その変化の中で消える生き物もいれば、増える生き物もある。それが自然にというものもあれば、私たち人間が持ち込んできたものまである。都心と言えど、まだまだ生物は多くいる、そのことを知らしめた一冊である。