箱根駅伝を歩く

毎年1月2・3日と箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)が行われる。2014年は、東洋大学が3区でトップに立ち、圧倒的な強さで王者に返り咲いた。山登りのスーパーエースである柏原竜二(現:富士通)がいなくなってから初めての優勝であり、強い東洋が戻ってきたという様相を見せた。

箱根駅伝は往復合わせて約11時間、距離にして約210kmもの長い戦いなのだが、それぞれの区間にはどのような名所があるのか、私もよく知らない。本書は箱根駅伝の区間を歩きつつ、隠れた名所を見つけだしている。

1区(10区)「大手町→鶴見 消えゆく“名難所”」
本章の構成は、区間ごとに分かれているが、往路・復路両方の区間は同じように扱っている。
まずは、東京読売新聞社新社屋前から鶴見中継所までである。読売新聞社からスタートすると、見えてくるのが「日比谷公会堂」のある日比谷公園が見え、新橋に向かう。その後田町・品川へとわたると、1区・10区ではかつて見かけた「蒲田踏切」があった。この踏切は京急の高架化により使われなくなり、2013年には撤去された。

2区(9区)「鶴見→戸塚 “権太坂のすき家”」
鶴見中継所の近くには「たすきリレー」と思わしき石碑が建っている。そこを抜ければ往復路ともにエース区間と呼ばれる場所だが、生麦を経由して横浜駅にたどり着く、そこからさらに行くとエース区間の名所である「権太坂」が見えてくる。本章ではこの権太坂のあたりには「すき家」があり、大きな看板は駅伝選手のみならず、観客としても名所として知られている。

3区(8区)「戸塚→平塚 “松並木とホテルエンパイア”」
エース区間は戸塚中継所で終わり、そのあとは江ノ島を経由して平塚まで行くのが3区、ないし8区である。戸塚中継所を抜けて1キロしないうちに「松並木」が存在する。その先に行くと「横浜ドリームランド」があり、その中にはバッキンガム宮殿のようなタテ獲物がある。これが「ホテルエンパイア」と呼ばれるところであり、建てられた当時(1964年)は最高級のホテルだった。そこから先に行くと江ノ島があり、茅ヶ崎を経由すると平塚中継所が見える。

4区(7区)「平塚→小田原 “河野兄弟の走った道”」
平塚を抜けると、大磯町が見えるのだが、そこの街には「大磯ロングビーチ」もあれば、伊藤博文、大隈重信、吉田茂など総理経験者が別荘を建てたことで知られている。とりわけ吉田茂の別荘は「大磯御殿」と呼ばれるほど有名だった。本章では「大磯御殿」も訪れている。そして大磯を出ると小田原中継所が見えてくる。

5区(6区)「小田原→箱根 “驚愕の箱根駅伝マニア”」
往路であれば、俗に「山の神」と呼ばれる登りのスペシャリスト、復路では下りのスペシャリストが集う区間には箱根ならではの名所がたくさんある。有名なところで言うと「かんれいどうもん(漢字に直す)」「大平台」「小涌園」「芦の湯」「芦ノ湖」がある。箱根の山を登ると旅館やホテルが立ち並ぶところもあるのだが、箱根駅伝の熱狂的ファンが1年前から宿泊を予約しているほど、箱根駅伝の時は予約がとりづらい。他にも箱根には「箱根駅伝ミュージアム」もあるため、箱根駅伝ファンにとってはたまらない場所として知られている。

箱根駅伝をテレビで見る私にとっては、実際に箱根駅伝の区間を歩いたことはない。そのため、どのような名所があるのか、テレビ越しでしかわからないため、大きな刺激となった。本書を通じて一度歩いてみようと言う気にもなってしまうのも、本書の醍醐味である。