究極の愛について語るときに僕たちの語ること

青月社 功刀様より献本御礼。
愛のカタチは人それぞれと言われているが、自分自身の考えが外れてしまうと、「それは愛じゃない」とか「非常識だ」と言って耳をふさいでしまう。しかし愛する人たちが表現するのであれば、どんなカタチであれ「愛」になる。それにとやかく言われる筋合いはない。
本書は様々な「愛のカタチ」について「究極の愛」と題して新宿ゴールデン街のマスターが追った一冊である。

1.「最強のふたり? ―恋人は障害者―」
最初は「障害者」である男性と付き合う人の物語であるが、相手の女性は何と風俗、それも現役のソープ嬢である。この2人はどのようにして出会い、どのようにして愛を育んでいったのだろうか。きっかけはある出版記念パーティの事だったという。障害者である彼は「障害者と性」についての本を出版し、現在もそれに関する研究を進めていたそうである。
元々風俗嬢の彼女はブログを通じて彼のことを知っていたと言うが、出版記念パーティからつきあい始めたというプロセスは何とも一途で、何とも二人が早くも意気投合をしたのかが見えてくる。しかもお互いにケンカもする事など小さないざこざもあるが、それでも「共通する強い絆」が最強にしてくれたのでは、と本章を読んで思った。

2.「レスボスの少女たち ―異性しか愛しちゃいけないって、誰が決めたの?―」
本章ではいわゆる「レズビアン」や「百合」といった関係なのだが、そのような人はけっこういる。知り合いに女子校の出身者もいたのだが、レズビアンの関係になった人も少なくなかったのだとか。
しかし、本章に出てくる彼女は、女の子が大好き、しかも中学生のころから何人かの女の子と付き合ったのだという。付き合っていく中で、女性ならではの愛憎劇も遭遇してきた。実際に背筋が凍った思いまでした事もあったのだという。一見男性から見ると華やかな関係に見えるのだが、実際は人生のように山あり谷ありの様な状態なのだと言うことを知らされた所である。

3.「百パーセントの夫婦 ―お見合い結婚、それから―」
「お見合い結婚」というと若い世代はピンと来る人が少ないと思うが、最近では地方が主宰となってやる、いわゆる「官製お見合い」と言うことをやっているところもある。
それはさておき、「お見合い結婚」をするところは今も昔も存在するが、見初められて付き合って結婚するよりも離婚する可能性は低いのだという。それはなぜか、理由は簡単でデートや一目惚れの場合は結婚するまでに100%好きの状態なので、後は降下するしかなくなり、離婚する可能性も高くなる。
それに対してお見合いは見ず知らずの人と結婚前提に付き合うため、お互いを知らない。それから付き合い始めて愛を育み始め、結婚に行くのだが、結婚してからも愛を育み続けるため、離婚はしにくい。それ故か本書で紹介されている夫婦は限りなく100%に近づくために今でも愛を育み続けているように見えてならない。

4.「オンラインの愛 ―もしも、ネット上でしか恋愛感情を抱けなくなったなら―」
本章のタイトルを見ると、オンラインゲームにおける結婚機能を使って、リアルでも結婚したのかと思ってしまうのだが、本章ではあくまでFacebookをはじめとしたSNSによる交流から出会い、リアルに移しての付き合いを描いている。しかも本章で紹介されているエピソードは日本のみならず海外にまで及んでいる。Facebookによる交流は国を越えると言われているがそのことを証明しているのかもしれない。

5.「白雪姫を待ちながら ―植物状態の妻を介護しつづける男―」
もしも最愛の人が「植物状態」になったら、本章でそのことを考えずにはいられなかった。「心筋症」により植物状態となった妻を持ちながらも、懸命に看病を続ける夫の姿を描いているのだが、その姿は、「本当に妻を愛しているんだ」と言うことを感じずにはいられなかった。自らの人生を犠牲にしてまでも最愛の女性に尽くす愛のカタチは、おそらく本書ほど力強くもあり、それでいて悲壮なもののように思える。

6.「元素番号14 番の恋人 ―ラブドールへの愛―」
「愛」は決して男女関係ばかりではない。「2.」で紹介したように女性同士の関係にも愛がある。本章では「ラブドール」と言われる、ラブドールとは、

「ダッチワイフの中でも特にボディが高価なシリコーンなどで作られているものを指す。シリコーンドールの一種でもある。男性の擬似性交、愛玩、観賞、写真撮影等に使用される。」Wikipediaより)

とある。つまり男性の欲求を満たすために作られた人形であるが、それを理想の恋人と思い、セックスだけでなく、良く恋愛ものの作品に出てくるような愛のはぐくみ方も行ったという。

「愛のカタチは人それぞれ」と言う言葉がこれほどまで忠実に表れている本は見たことがない。価値観も多様化していき、それと同時に考え方も多様化していく。もちろん愛のカタチも技術や価値観が進化しているのに比例して、本書のような様々な恋愛模様を映し出している。おそらく本書は私の知る事の無かった「愛」と言う名の万華鏡の世界に誘ってくれているのだと思ってならない。