神さまの贈り物

「こんなことをいきなり話しても、だれも信じてはくれないと思う。
 だけど本当にぼくは、天使と心を通わせたんだ。」(p.7より)

主人公は12歳の少年であるが、両親の仕事の関係で物語の舞台へと引越すことになった。物心の付いた頃から両親は働いていて、スキンシップがほとんど無く、愛情という愛情もほとんど受けたことがなかった。引越してからも親の愛情を受けることがなかったのだが、家の不思議さに不安を覚えた。そこから物語は始まった。

第一章「まりあさんの思い出」
まりあさんは、主人公の家庭教師につくことになった女性の名前である。そのまりあさんとの思い出は時に淡く、時に切なく、それでいながら今まで父や母からもらったことのない「愛情」を受け取った。
まりあさんから学んだことは何も学校の勉強ばかりでは無い、運動もさることながら生活、さらには娯楽にいたるまで色々な事を教えてもらったり、共に楽しんだりした。
まりあさんとの交流の中で出てきた主人公の「恋心」。その恋心は関わっていく内に強くなり、ついに主人公はまりあさんに告白することになった。その結果はここでは記さないものの、少年と少女の淡い恋物語に出てくる形なのだが、何ともこそばゆい展開なのが面白い。しかし、結末は何とも言いがたいし、それに書くのも辛くなるほどのものだった。

第二章「フェアリーの思い出」
それから主人公はふさぎ込んでしまったが、主人公はさらなる奇跡がやってきた。おそらく本章はファンタジーの分類に入るのかもしれないのだが、それでも主人公の慰めには十分すぎるほどの音型だった。フェアリーの正体はいったい誰なのか、それを知りたいと思い、読み進めていったのだが、読み進めていくうちにその正体がうっすらと見えてきたのだが、読んでいくうちに、第一章の延長線が張ってあるように見えてきた。

本書は小さくも、暖かく、それでいて悲しくも前を向いている物語である。無関心な少年が恋心が生まれ、興味を持ち、そして成長をする。そして淡い出会いは別れへと変わり、少年は悲しみにうちひしがれながらもさらに成長を続けていく。12歳にしては過酷なように見える運命なのだが、それが本書の魅力を引き立たせている様に思えてならない。