日本ウイスキー 世界一への道

少し先の話になるが2014年9月29日から2015年3月末に、朝の連続テレビ小説という番組で「マッサン」というドラマが放映される。これは主人公が外国人ということが話題となっているが、元々のストーリーはウイスキー作りが主軸となっている。
半年前の予習、というのは時期尚早なのかも知れないが、本書と共に日本のウイスキーの歴史と醸造の方法について紐解こうと思う。

第一部「ウイスキー 「生まれ」の現場から」
第一章「ウイスキーとは何か」
ウイスキーは蒸留酒の一つで、

「大麦、ライ麦、トウモロコシなどの穀物を麦芽の酵素で糖化し、これを発酵させ蒸留したもの」Wikipediaより)

とある。誕生したのは1300年代で、もう700年の歴史となるわけだが、主なモノとしてスコットランドで生まれた「スコッチウイスキー」、アイルランドで生まれた「アイリッシュウイスキー」が挙げられる。
日本で生まれたのはちょうど大正時代、「竹鶴」というブランドの元となった竹鶴政孝とその妻リタによって誕生した。ちなみに最初に書いた「マッサン」の主人公2人のモデルはその竹鶴夫妻である。

第二章「環境、水、原料」
では、ウイスキーはどのようにして作られていくのだろうか、本章以降は製造工程を一つ一つ紐解いていく。
良いウイスキーを作る際に大事な要素として「自然環境」「水」「原料」の三本柱が挙げられる。そのいずれも欠けてはならないものである。当然ウイスキーの工場はその3つの要素が全て備わっている場所に建てられている。

第三章「製麦」
ただし、3つの要素の中で「原料」は元々作れる訳では無い。むしろそれを作れる環境にあると言うことが大事である。そのため、本章では「大麦」からウイスキーの原料をつくるという、いわゆる「製麦」の工程を紹介している。「製麦」と言ってもここから3つの工程に別れており、

1.浸麦(しんばく)
2.発芽
3.焙燥(ばいそう)

というのがある。

第四章「ピーティング」
ウイスキーを作る工程として「ピーティング」というあまり聞き慣れない言葉がある。調べて見ると、

「風乾(ふうかん:自然乾燥のこと)したピート(湿原の植物の組織が腐朽堆積した泥炭といわれるもの)を、麦芽の焙燥時に副原料として燃やして(燻べて)、その煙を層の中を通すことによって、麦芽に特有の煙香をつける操作」(p.70より一部改変)

というものである。早い話は「大麦を燻(いぶ)して、香りを引き立たせる作業」のことを指す。

第五章「仕込」
第四章までで原料の製麦は完了し、いよいよウイスキーをつくる「醸造」に入っていく。
仕込は大麦から作った「麦芽」から発行をするための麦汁を取り出す作業のことを言う。この麦汁を取り出すためには粉砕や糖化、濁りなどが重要になってくるため、最も緊張する作業であるという。

第六章「発酵」
仕込が終われば発酵作業になる。ここでようやくお酒にあるアルコールが生まれてくる。酵母や乳酸菌などを投下し、アルコールを生み出すと言った作業である。

第七章「蒸留」
ウイスキーが生まれる最後の工程として「蒸留」がる。これは発酵を行ったものを蒸発させてアルコールと香味成分を取りだし、ウイスキーを生み出すものである。

第二部「ウイスキー 「育ち」の現場から」
第八章「製樽」
第一部でウイスキーは生まれたが、本当のウイスキーとして出回るのはこれだけではない。今度は「育てる」ことにある。よくスーパーやコンビニ、あるいは酒屋などで見かけるウイスキーの中には13年物や15年物といった年代物も置かれていることがある。これは10年以上の月日をかけて育てる(熟成する)ことによって味に深みを生み出している。この「熟成」は第一〇章に任せることにする。
ここではウイスキーを貯蔵するための「樽」をつくる工程について取り上げているが、そもそも日本では日本酒や醤油など「樽」を使う機会が多い。しかし日本の外に目を向けてみるとフランスなどではワインの貯蔵にも「樽」が使われる。

第九章「樽詰」
樽を作り終えたら、今度はその樽の中にウイスキーを入れる、いわゆる「樽詰」の作業である。

第一〇章「貯蔵・熟成」
樽詰が終わると貯蔵だが、この貯蔵も方式もさることながら湿度や温度などに気を遣う必要がある。少しでもかけてしまうと味の深みがなくなってしまうだけでは無く、ウイスキーとしてなり立たなくなってしまうこともある。

第一一章「ヴァッティング、ブレンド」
「ヴァッティング」は、ウイスキー同士を巨大な樽に移して混ぜ合わせることを指している。そう考えると「ブレンド」とも似通っているように見えるが、はっきりと違うのは「ヴァッティング」は同じ種類のウイスキーを混ぜ合わせる(違いは年代くらい)ことだが、ブレンドは違う種類のウイスキーを混ぜ合わせることを指す。本章でも言及している「ブレンド」は「モルトウイスキー」と「グレーンウィスキー」の混ぜ合わせのことを指している。

第一二章「後熟」
ブレンド・ヴァッティングが終わった後、再び樽を貯蔵してさらに熟成をかける。これを「後熟」と呼ばれる工程である。

第一三章「濾過および瓶詰」
熟成が完了すると最終工程として「濾過(ろか)」が行われる。熟成時などで出てきた濁りや沈殿などを除去し、ウイスキーを取り出す。その後に瓶詰され、市場に出回る。

第一四章「ウイスキーのテイスティング、楽しみ方」
ウイスキーの呑み方には色々な種類がある。大きく分けると、

・ストレート
・ロック(オン・ザ・ロックス)
・ハーフロック
・水割り
・ハイボール
・ミスト
・トワイスアップ
・ホットウイスキー

と本章では紹介されている。最初の5つは私も呑んだことはあるのだが、最後の3つは始めて聞く呑み方である。是非試してみたい。

ウイスキーは昨今の「ハイボール」のブームに伴い注目されてきたのだが、半年後のテレビ小説で再び脚光を浴びることになるのは間違いない。その際にウイスキーの楽しみ方を知らなくてはいけないな、と思い本書を手に取ったのだが、歴史だけではなく、ウイスキーができるまでのことを事細かに記されており、ウイスキーができるまでのことを興味深く描いている。それだけでは無くウイスキーの楽しみ方もあるため、ウイスキーを2倍も3倍も楽しむ事ができる。おそらく連続テレビ小説が放映されるまでの予習本にしては本書は便利なのかも知れない。