黙示録――イメージの源泉

「黙示録」と言うとイメージするのは「終末」「最終戦争」といった禍々しいものを挙げられる。その「黙示録」の原点を辿っていくと、キリスト教の「新約聖書」の最後に出てくる「ヨハネの黙示録」にある。そもそも「ヨハネの黙示録」には何が記録されているのか、そこからどのようなイメージとなっていったのか、本書は「黙示録」のイメージの変遷について追っている。

第Ⅰ章「「七」という数字―『ヨハネの黙示録』から」
「七」という数字を見ると縁起がよい。パチンコなどでも「ラッキー7」として扱われており、「七福神」というものもある。しかしキリスト教の元をただせ「ヨハネの黙示録」に出てきており、神・キリスト・ヨハネの間に天使が7人いることから来ている。

第Ⅱ章「終末の源泉―聖書のなかの黙示をたどる」
キリスト教では「終末思想」がいわれる。これは世界の終わりの時に「最後の審判」が行われ、キリストの信仰を行っていれば天国へ昇り、そうでなければ地獄へ落ちると言われるものである。その「終末」と呼ばれるものは「黙示録」の仲に収録されており、使徒の一人であるパウロによって形成づけられた。他にも旧約聖書にもそれに近い事が書かれているという。

第Ⅲ章「変奏される神話―黙示録思想の展開」
神話は国々、あるいは宗教によって形成づけられ、時代とともに細々ながら変化していく。その中でキリスト教における「黙示録」はどのように変化を来していったのだろうか、本章では宗教の変遷とともに、哲学の変遷も取り上げられている。

第Ⅳ章「女の出番―重なり合う聖女と淫婦」
本章によれば、そもそも「黙示録」には女性がほとんど登場しないという。取り上げられる数少ない女性にはどれくらいいるのか。本章では聖書だけではなく、絵画・肖像画などをもとに紹介している。

第Ⅴ章「「敵」としてのアンチキリスト―イメージの戦争」
キリスト教もそうだが、イスラム教など宗教による「対立」も少なくない。とりわけキリスト教・イスラム教の原理主義者によるものが最たるものである。キリスト教における対立相手、つまり「敵」はどのように映っているのだろうか、それについて取り上げている。

第Ⅵ章「カタストロフ―怪獣、核、そして騎士」
黙示録というと「終末」もあるが、それと同時に天災・人災による「破壊」というイメージもある。そのイメージはどのようにして形成されてきたのか。それを怪獣映画、核戦争、そして騎士の絵画をもとに変遷を追っている。

本書はキリスト教における「黙示録」の思想史と言うところにフォーカスを当てているが、キリスト教、とくに聖書のことを勉強していないとついて行くことは非常に難しい。そう考えると「黙示録」について、さらにキリスト教についてもっと知りたい人にとっては適した一冊である。