エネルギーを選びなおす

昨今のエネルギー問題において、一番の焦点となっているのが「原発再稼働か否か」「原発を即時廃止するか否か」と否応にも「原発」ばかりが叫ばれているように思えてならない。そのきっかけがちょうど3年前に起こった「東日本大震災」である。この震災では津波を中心に多くの命が奪われたが、他にも福島第一原発事故により、放射能の心配が今でも続いている。中には警戒区域となっていて、故郷に帰れない人もいる。

原発問題が叫ばれている一方で、アメリカでは「シェールガス」の発掘による「シェール革命」が起こっている。それにより、エネルギーの需要・供給が大きく変化するという見方も出てきている。

では日本ではどうなのか。仮に脱原発が達成したとしても僅かしかない自然エネルギー、とりわけ太陽光にフォーカスしすぎてしまい、火力・水力など既存のエネルギーバランスをどうするのか、そして本書で提起している「ベストミックス」をそうするのかを再考する必要がある。本書は「選び直す」観点からエネルギー・システムの現状と提案までを論じている。

Ⅰ.「エネルギー狩猟文明」
エネルギー「狩猟」と定義しているところが現状を突いていると言っても過言ではない。その理由として日本で最も発電している所は「火力発電」であるが、その原料はLNG(液化天然ガス)や原油が主流となっている。しかし最近では最初にも書いたように「シェール革命」が起こっている以上、日本はエネルギー輸入の比重をどのようにするのか再考する必要がある。もちろん「GTCC(ガスタービンコンバインドサイクル)」をはじめとした新技術の取り入れも含めてである。
しかし資源エネルギーの消費はいつしか限界が来る。以前は無限にあるという考えから消費をつつけてきたが、資源枯渇のリミットが見えてきたときに、「石油争奪戦」をはじめとした資源エネルギーの争奪戦が始まった。

Ⅱ.「機能不全のエネルギー・システム」
石油ショック、そして脱原発、ともに代替エネルギーが求められる様になった。しかし石油にしても原子力にしても代替できるエネルギーが存在するのかというと、太陽光・地熱・太陽熱などいくつか存在するのだが、それで火力・原子力が行った電力量をまかなわれるのかと言うとまかないきれないと言うほか無い。この自然エネルギーに関して太陽光が台頭に上がりつつあるものの、それに反対・批判的な意見も見られ、論争に発展した。

Ⅲ.「自然エネルギーを使いこなす社会へ」
自然エネルギーを使いこなすためにはどうしたら良いのか、地域ごとの特性を活かしたエネルギー発電をする必要があるのだが、戸別にそれをやるのにも限界がある。そこで自然エネルギー対策は国などマクロの規模にするのでは無く、戸別のようにミクロな規模にするのでは無く、市区町村や地区、集落ごとに考え、決めることで適正規模のエネルギー創出やエネルギーバランスを求めることができる。

日本のエネルギーの多くは海外から資源を輸入して、電力をまかなっている。しかし資源の輸入に限界があり、もちろん資源にも上限がある。日本は自然エネルギーにシフトしていく必要があるが、それは10年、20年、50年長期的なスパンをもってゆっくりと作っていく必要がある。それは今、国家を動かしている世代だけでは無く、わたしたち、そして次の世代に向けて果たすべきものであろう。