わたしが正義について語るなら

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「アンパンマン」などで有名な漫画家・やなせたかし氏が昨年の10月13日に亡くなられた。94歳と、まさに「大往生」と呼ばれる人生だった。やなせ氏は漫画家のみならず、絵本作家・詩人・作詞家・イラストレーターなどマルチに活躍した。やなせたかし氏の作品というと、先程書いた「アンパンマン」は有名だが、私としては今から47年前に作詞された歌「勇気の歌」が非常に印象的だったことを覚えている。小学校のときに歌ったのだが、いまでも歌詞は頭から離れられないほどである。
そのやなせ氏が「正義」について自らの戦争体験、環境問題などの私見をもとに綴ったのが本書である。

第1章「正義の味方って本当にかっこいい?」
「正義の味方」を扱う作品は色々とあるが有名なものでは、著者が生み出した「アンパンマン」である。その「アンパンマン」がどのようにして生み出されたのか、そして「アンパンマン」は、はたして「正義の味方」なのか、著者の立場、視聴者の立場それぞれの観点から綴られている。
アニメや漫画の「アンパンマン」では描かれない「アンパンマン」の姿が著者から綴られているのが非常に印象的である。もちろん「アンパンマン」以外のキャラクターについても言及されており、それぞれのキャラクターがどのようにして描かれたか、そして反応はどうだったのかも綴られている。

第2章「どうして正義をこう考えるようになったのか」
「アンパンマン」が作られる際に影響を受けた作品がある。それは、

「ぼくのアンパンマンは『正チャンの冒険』『タンタンの冒険』シリーズの影響を受けていることは間違いありません。」(p.44より)

と言われている。著者が小さい頃に2つの作品に出会い、夢中になっていたのだが、それが「アンパンマン」の原点になったのだという。小さい頃から両親の死、さらに大東亜戦争の経験を経て将来のことについて不安を抱えながら、仕事を行ってきた。その人生の中で次第に「正義」と言う言葉の意味を探し始め「アンパンマン」という「正義の味方」が生まれた。

第3章「正義の戦い方」
「正義の味方」と呼ばれる人の戦い方について「相手を殺してはいけない」「いばらない」「自分なりに戦う」など、アンパンマンを通じて著者なりの「正義の戦い方」を取り上げている。その思想がアンパンマン、及びアニメ「それいけ! アンパンマン」のオープニングテーマに昇華されている。

第4章「ぼくが考える未来のこと」
未来は何が起こるのかわからない。これまで著者は「正義」について語ってきたのだが、その「正義」と現実には乖離が存在する。それでも90年以上生きてきた著者が示す未来はどうあってほしいのか、そのことについて語っている。

本書は、文章と言うよりもむしろ、著者自身がしゃべって文章にしたためている様に見える。それは等身大の著者の考えをそのまま文章にのせて読み手に伝えているように思えてならない。一世紀近く生きているからでこそ、著者自身の考えを「ありのまま」に伝えたい。本書は「正義」を主題に置いているが、ほんとうのところ「ありのまま」のやなせたかし氏の姿を映し出しているかのようである。

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