九死一生

よく諺で「九死に一生を得る」というものがある。本書のタイトルを見て、小手鞠氏の作品からして異色の作品のように思えてならない連想をしてしまうのだが、実際の所、小手鞠氏の得意芸でもある「愛」を中心に描いている。しかし著者が描いている愛の中では異色とも言える「喪失」がもたらす愛を描いている所が印象的である。

あと本書を読んでみてタイトルの意味はもう一つある。本書は猫を主人公として描いているのだが9回生まれ変わると言うのも意味合いに込められている。絵本で「百万回生きたネコ」というのがあるのだが、その作品とは少し趣が異なるものの、共通点は存在する。

恋愛小説であるのだが、ある種異質な分、ありきたり感がなく、むしろ刺激的な作品になっていると言える。