2011年新聞・テレビ消滅

インターネットの隆盛により、新聞やテレビなどの既存メディアが衰退している。新聞の発行部数も減少の一途を辿り、テレビの視聴者も減少、さらには雑誌の休刊・廃刊も相次いでいる。しかし既存メディアの中にはインターネットとの共生を図るなどの変化を見せるところもあるのだが、大方はインターネットと既存メディアの対立は今もなお続いている。しかし、これは日本のことだけではない。アメリカでもニューヨークタイムズの衰退がインターネット上で話題になったほどである。本書はこの新聞・テレビの消滅について2009年の立場から、東日本大震災が起こった2011年にそれが起こるだろうと予測している。

第1章「マスの時代は終わった」
よく「マスメディア」と言われるのだが、その中の「マス」とはいったいどのようなものなのだろうか。直訳すると「大衆」という意味合いになるのだが、メディアの観点からか「世間」と呼ばれる事の方が多い。しかし本書では「大衆」という定義でもってとらえている。
「大衆」と言っても取り上げる世論調査は新聞によってまちまちであり、最近ではインターネットでも世論調査を行っているが、そこでもテレビや新聞などとは異なる結果となる。どこをどの様にして「マス」と定義できるのか、それは難しくなってきたと言っても過言ではない。

第2章「新聞の敗戦」
「マスメディア」に代わる存在として台頭してきたのが「ミドルメディア」と呼ばれるものである。しかし「ミドル」と言う言葉は本来、「中間」と意味するのだが、大衆でもなく、かといって個人宛でもないメディア、いわゆる特定の分野や業界をターゲットに絞ったメディアのことを指している。これはマスメディアが誕生したときから存在したものの、マスメディアに後塵を拝しつづけられていた。しかし新聞が伸び悩む一方で専門的な情報を欲することから小さなメディアがこぞって誕生し、それぞれの形でマスメディアの客層を取っていった。

第3章「さあ、次はテレビの番だ」
本書が出版されたのは2009年であるため、まだ地デジ放送が完全移行する前であるのだが、当時は地デジへのシフトができている家庭とできていない家庭が半々だった。他にもコンテンツが劣化したことも挙げられており、さらには予算の大黒柱である広告費の減少もあって、負のスパイラルが起こってしまったことにより、衰退の一途を辿った。

第4章「プラットフォーム戦争が幕を開ける」
かつてはマスメディアとネットメディアは敵同士だった。しかしマスメディアもネットの拡散力を看過できず、オンデマンド放送などで対応するなど、対策を講じ始めている。他にも動画共有サイトでは生放送を行い始めるなど、メディアの多様性を如実に表すような事も現に起こっている。

何度も書くが本書は地デジが完全移行する前の2009年に出版されたものである。著者が2011年をターニングポイントとした要因は地デジ化と、情報通信法の施行にあった。この予測自体は間違ってはいなかったが、完全に消滅したわけではない。当然徐々に代わらない部分は現在進行形で消滅していっているのだが、生きのびているメディアは多かれ少なかれ「変化」している。その変化に対応できるか、そして自ら「変化」できるのか、マスメディアにはそれが最も問われている課題である。