人は100Wで生きられる~だいず先生の自家発電「30W生活」~

3年前に起こった東日本大震災、そして福島第一原発事故を機に世論は「脱原発」の声が高まっている一方で、電力不足を補うべく原発再稼働を求める動き、脱原発をやりながら自然エネルギーに転換しようとする動き、同じく脱原発でありながらもGTCC(ガスタービンコンバインドサイクル発電)に転換しようとする動きもある。

そんな中で著者は自然エネルギーの自給自足を実践し「30W生活」を実践し続けているのだという。著者自身の体験談を元に、これからの自然エネルギーの使い方、さらには、電力と自然、人間との共生について書かれているのが本書である。

第1章「100Wで生きていける」
著者は30Wで生活しているのだが、本書には「100W」とか「30W」とかが出てくるので、ここで説明しておく。「100W」と言っているのは1世帯で暮らす電力量がこれだけで大丈夫ですよ、と言うことを表している。通常は1世帯当り平均1時間あたり400Wほどであるため、それの4分の1で暮らすことができるのだという。
しかし著者は自家用の水力発電を作っているため、100Wはおろか、「30W」だけで暮らせるのだという。

第2章「これからの自然エネルギー」
自然エネルギーで脱原発は、脱原発理論でよく言われていることなのだが、実際に自然エネルギーだけで原発分をまかなえるか、と言うとなかなかそうはいっていない。太陽光でも需要が頭打ちになっている現状があり、期待の強い地熱発電も温泉団体による反発が根強く、風力発電も設置できる地域が限られている。しかしこれはマクロ的な観点で見られていることが多いのだが、エネルギーの「地産地消」によって、地域単位で電力を供給し、消費することができる。今ある原子力はもちろんこと、火力にも頼らない道があるのだという。

第3章「1000年持続可能な社会とは」
「1000年持続可能」と言うのが疑わしい。そもそも地球もとい宇宙も生き物であるため1000年の周期でいくと気候はもちろんのこと、それにより自然環境も変化する。その「変化」は人為的なものもあるのだが、多くは自然な変化で行われる。そのことを踏まえると、「1000年持続可能」な社会を創り出すためには、常々変化に対応できるものにして行く必要がある。

第4章「原子力を卒業しよう」
原子力発電への忌避感が強くなっていっているのだが、財界を中心に原発再稼働の声も上がっている。現状では原発が稼働していない状態であるのだが、そこから脱原発、ならぬ原発を卒業するまでにも時間がかかるのだが、それでも20年ないしは30年の間に原発そのものを廃棄できるようにしておく必要がある。

かつて、日本はおろか、世界に「電気」と言うものは存在しなかった。電気を生み出す力、利用する力が誕生してから世界中の文化は大きく変わった。それを元に戻すことは難しいものの、自然と共生したエネルギーサイクルの概念は多かれ少なかれ変えることができる。本書はその可能性を見出した一冊である。