いつか、この世界で起こっていたこと

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昨日と同じく短編集を取り上げるが、本書は東日本大震災の悲しみを実在では無く、むしろ風刺を込めた物語として作られた作品である。もっとも印象づけられているのが 最初の所である「うらん亭」というもの。これは福島第一原発事故のことを描いている。他にも「波」は三陸などを襲った大津波のことを表し、「無く男」は放射能汚染や風評被害にまつわることをあぶり出し、「チェーホフの学校」は、今から28年前に起こった「チェルノブイリ原発事故」のことを描いている。

他にも色々な短編が出てくるのだが、印象的なものは前述の3編である。東日本大震災について、悲しみ、苦しみ、怒り、そして立ち上がる勇気、と言った作品は数多くあるのだが、風刺というよりも触発されて、架空の物語でもって震災の恐ろしさを訴えかける作品はなかなか無い。もし震災のことを描くとしたら、実際の震災と架空の人物を重ね合わせて書かれることが多いのだが、本書はそういったものはほとんど存在しない。存在しているところとしては「波」くらいだろう。震災のことを直接的に表現しなくても、著者が感じている震災の悲しみを本書では映し出している。

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