日本の農業は“風評被害”に負けない

東日本大震災を始め、農業・漁業などに関して災害が起こると、「風評被害」と言うのが起こる。風評被害について簡単に言うと、災害における無根拠な説を流布して、農業・漁業の生産や販売を直接、および間接的に妨害するといったことを表している。とりわけこの東日本大震災では数多くの風評被害が起こっており、現在進行形にて流布されているものも少なくない。
しかしそんな風評被害に対し、立ち向かっている農家の方々も存在する。本書は東日本大震災における風評被害に立ち向かいながら頑張っている農家の方々を取り上げつつ、風評被害の現状について取り上げている。

第一章「ルポ・農家たちの決断と取り組み」
東日本大震災における風評被害が起こり始めたのは2011年3月19日の時であり、ちょうど福島第一原発事故が起こって1週間たった頃のことである。その時に起こったものとして野菜や果物の取引価額が急落したり、場所によっては「出荷停止」になったりしている。その原因の一つとして「放射能」が挙げられており、それを払拭するのは難しいと判断した農家の中には畑を一度潰す決断をした所もある。東北を始め茨城や栃木の一部でもそういった状況にあったのだが、このピンチをチャンスに変えて安定供給の戦略を練る、直取引など取引への変化を起こすと言った農家も存在した。

第二章「広がる“風評被害”の波紋」
しかし「風評被害」は今もなお無くならない。しかもその対象は農家だけに止まらず、流通業者などにも影響を及ぼしている。それを払拭するために変化を起こしたり、自らも情報発信をしたりするなど信頼を取り戻すために日々努力をしている人々もいる。ちなみに本章では以前「マネーの虎」という番組に出演した名物社長が経営している会社も取り上げられている。

第三章「現場では何が問題だったのか」
「現場」と言っても本章では「農家」と言われるのだが、他にも政策を出す現場として政府もあれば、マスコミ報道としてだと「取材現場」ともいる。しかしそれぞれの現場は「農家」と言われるところをとらえているのかと言うと、100%できていない。ましてや被災地とマスコミ、政府の距離からすると半分も吸収できておらず、ましてや誤った話まで聞かされている可能性さえあり得る。しかし農家もいろいろで報道や風評被害を払拭するために自ら行動を起こした農家もいれば、何もせずにただおびえている、もしくは国や地方からの補償をせびっている農家もいる。

本書のタイトルにある「“風評被害”に負けない」ためにはどうしたら良いのか、それは何かしらの行動を起こすことである。最も第一章や第二章における行動が全てではないものの、それぞれの農家に合わせた行動や考えを練って動き、変化を起こしていることである。もちろん昨今の農家事情は悲観的に見て取れるが悲観をチャンスと捉え、変化を起こすことが最も大切なことではないだろうか、と本書を読んでそう思った。