百年前の日本語――書きことばが揺れた時代

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「日本語の乱れ」というものが日常茶飯事にように言われているのだが、実際に「正しい日本語」とは何なのか疑問に思うことがいつもある。もっとも日本語も歴史と共に変化をしていると言う考えを持っており、変化の中に相容れられないものがあるのかも知れないと勘繰ってしまう。
そこで本書は今から百年前の日本語はいったいどのようなものだったのかを取り上げている。百年前というと、今年から遡ると大正3年の時である。ちょうど「大正ロマン」の象徴の一つである「カチューシャの唄」が流行したり、現在でも愛されている「森永ミルクキャラメル」が新発売したりした時期である。その時代の日本語はいったいどのようなものだったのか、その中での批判はあったのかそのことについてフォーカスを当てている。

第一章「百年前の手書き原稿」
「手書き原稿」は夏目漱石の自筆原稿のことである。その自筆原稿を検証しながらどのような日本語を使っていたのかを取り上げているが、ちょうど漱石の時代では旧字体もそうだが新字体も使っていた事が明らかになっている。他にも康煕字典体(こうきじてんたい:旧字体のこと)についても言及している。

第二章「「揺れ」の時代―豊かな明治期の書きことば」
今でも表記にまつわる「揺れ」は存在するのだが、百年前も同じように「揺れ」は存在したという。例えば本章でも取り上げているが「手巾」という感じだが、現在では「ハンカチ」と表されるのだが、当時はそのまま「シュキン」と表される事もあり、「ハンケチ」とも呼ばれる事もあった。他にも「ごたまぜ」と言う言葉を「混淆」という時に使うなど、挙げるだけでもきりがないほどたくさんある。

第三章「新しい標準へ―活字印刷の広がりと拡大する文字社会」
百年前と言えば活字出版が出てき始めた頃であるため、それに向けた日本語としての「標準」づくりも活発化されていった時期でもあった。その時代の中で新聞や雑誌はどのような日本語を使っていたのかを取り上げたのが本章である。

第四章「統一される仮名字体―失われた選択肢」
「仮名字体」というと、今では「あいうえお・・・」と言うように使われるのだが、特に「わ・い・え・を」と言うものがあるのだが、昔は「わ・ゐ・ゑ・を」というように使われていた。他にもパソコン環境によっては表すことのできない仮名も使われている事についても扱われている。

第五章「辞書の百年―辞書を通してみた日本語の変化」
時点というと本書のイメージでは「国語辞典」の事を表しているのかと思ったが、本章では「英和辞典」である。当時は「英華辞典」という呼ばれ方があったのだが、英語と訳の日本語を表しているのだが、その中の日本語がどのように表記されていたのかが良く分かる。

私自身「日本語の乱れ」と言う言葉は信じない。言葉はすべからくして進化するものであり、その進化の度合いによって称賛したり批判したりする産物として「乱れ」になっていると言うことを、こういった日本語に関する本を取り上げる度に書いている。その証明となるのが本書と言えるし、百年前の日本語と、今の日本語とでどのように変わっているのか、と言うのが良く分かる一冊である。

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