新しい労働社会―雇用システムの再構築へ

労働法というと、「労働基準法」を始め様々な法律で守られているのだが、労働システム自体は時代と共に変化している。それに法律が対応しているのかと言うとなかなかそうとは言えない。もちろん労働システムも社会に対応しているかというと、首をかしげる所もあるのだが。「変化」と言うと10年近く前から「派遣」などの「非正規雇用」が出てき始め、リーマン・ショック以降になると、「派遣切り」と言うのが話題となった。最近では「限定正社員」というような存在も出てきており、労働環境そのものにも変化は生じられた。では、本書の話に入るのだが、現実と雇用システム、もとい、現実と雇用システム、そして法律と3つの乖離がある状態の中で新しい労働社会を、新しい雇用システムをどのように作れば良いのだろうか、本書は課題と共に提案している。

第1章「働きすぎの正社員にワークライフバランスを」
現時点では起業によるものの、残業時間の規制は行われている。とはいえ行われていない所も点在しており、一部の大企業や中小企業にて行われている。最近では「ブラック企業」という用語も出てくるほどになった。その一方で「ワークライフバランス」の浸透も行われているのだが、こちらも企業によってまちまちである。

第2章「非正規労働者の本当の問題は何か?」
非正規労働者が増え始めたのは21世紀に入ってからのことである。ちょうど「偽装請負」が話題になったのも本書が出版される数年前の事である。しかし派遣労働などの非正規労働者は給与が安いばかりではなく、リーマン・ショック以降では「派遣切り」という憂き目に遭っているのも事実として存在する。

第3章「賃金と社会保障のベストミックス―働くことが得になる時代へ」
正社員にはある程度の福利厚生なども存在しており、社会保障もある。しかしワーキングプアと呼ばれる様な存在もおり、なかなか生活が改善されないという労働者(非正規・正社員両方とも)もいる。しかし、働く事で得するような給与制度を見直す、あるいは職業訓練や教育費などの新しい賃金の考え方について提示している。

第4章「職場からの産業民主主義の再構築」
本書の根幹は「労働システム」の再構築であるが、その中には「賃金改革」も盛り込まれている。しかし誰が改革するのか、と言うと会社単位で行うのが主であるのだが、もっとも労働に関する法律の整備をする必要があるとするならば、政府にも及ぶ。

労働環境は常日頃から変化している。その中で法律としても、「労働システム」としても変化を起こす必要がある。それをいったい誰がやるのか、政府もさることながら民間でもできることを行う必要がある。現に安倍政権下でもいくつかの労働に関する法律の改正案が出てきているわけだが、まだ異論のある状況にある。しかし、実際にやってみなければ分からない。そう言いざるを得ない。