夢はトリノをかけめぐる

もう終わって半年経つのだが、今年の2月にロシアのソチで冬季オリンピックが行われた。男子フィギュアスケートの羽生結弦選手を始め多くの選手が活躍し、メダルを獲得した。

さて本書の話に映るのだが、そのソチオリンピックの2大会前、イタリア・トリノで冬季オリンピックが行われた。しかしこの時の日本代表選手団は不振に次ぐ不振で、メダル獲得ゼロとまで言われるほどだった。しかし女子フィギュアスケートで荒川静香が金メダルに輝くと言った活躍もあり、不振の中で一筋の光明が見えた。

著者はミステリー小説を中心に出していたのだが、自ら飼っている猫と一緒に取材を行い、トリノオリンピックを観戦したことを小説にしている。本書の最後には、

「※本書は、事実にもとづいて書かれていますが、一部はあからさまにフィクションです」

とある。本書には小説の他にも自ら撮影した写真がちりばめられているため、そこの所は「事実」としてあるのだが「あからさまにフィクション」の所は活躍していなかった選手、あるいは旅行の先々で出会った人々の名前を架空の人物にデフォルメを行って出しているのかも知れない。

ともあれミステリー小説が多い東野氏だが、その中でも本書は紀行小説というカテゴリーに分類できるものであるため、もっと違う東野作品を見たい方であればおすすめと言える。