映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?

私自身、映画館に行くことがほとんど無いため事情はわからないのだが、今年の初めごろに観たい映画があって、それで1回行ってみたが入場料が高かったことに驚いてしまった。金額はタイトルにある通り1800円だが、1回の視聴だけでここまでの金額をとるのはどんなビジネスモデルなのだろうとふと疑問に思えてしまう。本書はその「疑問」に答えるとともに、映画館業界のからくりについて解き明かしている。

第1章「映画流通の構造と機能」
最初に書いた1800円は高いように見えるのだが、実際の所作品によって異なる。感動できて本当の意味で「安い」と思える作品を見ることができたのなら、1800円以上の価値はある一方で、「1800円は高い」と思うほど質の低い作品もある。そのため、全体的に「高い」「安い」は心の満足にあたるため一概に言えない。しかも1800円はあくまで当日大人1枚の料金の事を指しており、曜日・性別による割引、あるいは前売りで買った場合はこの限りではない。しかし当日料金がなぜ下がらないのか、著者も下げるべきと主張しているにもかかわらず、変わらない理由はある「固定概念」があるからであるという。

第2章「シネコンの大半が、赤字だと言われている理由」
かつては東映や東邦などそこでしか見られない映画館がいくつかあった。私自身も小さい頃年に数回映画を見たのだが、大概その時代だった。しかし時代は変わるもので、現在はシネマコンプレックス
(シネコン)と言う製作会社の異なる映画を会場の大小に合わせて公開すると言った携帯である。シネコン自体は1984年に「キネカ大森」が誕生したことから歴史は始まったのだが、今となってはシネコンで映画を観ることがメジャーになってきている。とはいえ2000年代に業界再編が度々起こっており、本章でも未だに赤字である事を主張している。

第3章「世界一高い映画入場料金は、いかにして形成されたのか」
「当日券 大人1枚 1800円」
現状この金額はほとんどのシネコン・映画館で実施されている。しかしなぜこのような金が苦になったのだろうか。1800円になった具体的は1993年。ちょうどバブルがはじけ、「失われた10年」ないし「失われた20年」と呼ばれていた時代である。しかし原因としては、元々映画館業界が斜陽産業にほど近かったことが挙げられる。同時にそれが「内向き」あるいは「ムラ社会」という概念を引き起こしてしまい、インフレなど複合的な影響も相まってだんだんと入場料が値上がったという歴史的な経緯が存在する。

第4章「映画館の敵は、ビデオか?外資系シネコンか?」
では映画館が衰退している原因はいったい何なのか、本章では「ビデオ」なのか「外資計シネコン」 なのか、どっちかの議論を提示している、とその前に、先程当日1800円の議論が行われたのだが、他にも割引や前売りなどの料金はいかにして推進され、決めたのかも謎である。本章ではそこから解き明かし、メインとなるビデオとシネコンの乱立によって、さらに映画館への客足も減少していったのだが、「どっちが悪い」という議論ではなく、両方に要因がある。

第5章「割引料金戦国時代」
客足の鈍化を食い止めるために映画館も手をこまねいていたわけではない。その一つとして「レディース割引」や「曜日割引」など数多くの「割引」を乱発したことに上げられる。客足の鈍化を防ぐために必至になって割引を刊行する。しかしそれには効果があったのかどうか甚だ疑問であると著者は指摘する。

本書の巻末にはユナイテッド・シネマの社長と著者とのインタビューが掲載されている、そこで社長がある事を口にしている。

「平たい言葉で言ってしまうと、丼勘定ですよね、業界全体が。僕が(前の会社)でたたき込まれた、PLでありBSであり、儲けるときは仕入と売上があってという、非常にオーソドックスな計数管理がなされていない。」(p.233より一部改変)

丼勘定というと、以前「葬儀業界」もそうだった。数ある会社が自分たちの良いようにガイドラインを引いて設けていたのだが、ここに来てイオンなどの会社が参入してきたことにより、丼感情が崩れてしまったという経緯を思い出した。そう考えると、映画館業界もある種のカンフル剤を入れる必要があるのだが、対談を見ていくと既に実行している所もあるのだという。その対策は単純に「安くする」のではなく、まさに顧客心理を利用した面白い対策である。それが千差万別化し、映画館業界の活性化につながるのであれば本書も含めて面白いと私は思う。