夜市

「夜市(よいち)」は簡単に言うと夜に店を出す市場の事を言い、本書は主人公の家からかなり離れた公園で開かれていた不思議な夜市を舞台にしたホラー作品である。しかしホラー作品と言ってもヒューマンドラマも入っており、読み終わると非常に心温まる感じになる。

まずなぜ「不思議」なのかと言うと、本書で挙げられる「夜市」は妖怪たちが様々な「モノ」を打っていることにある。もっと言うと「モノ」は物体もあれば才能など目に見えないものまである。他にもその「モノ」を買う際の対価は、人間界にある硬貨や紙幣ではない。ある種の物々交換と言える様なものである。当然主人公も夜市で欲しかった「モノ」を買っていくわけだが、その対価は主人公にとって最も罪悪感を覚える存在だった。その存在により、主人公は活躍するものの、人間の「怖さ」を感じさせずにはいられなかった。それでも読み進めていくうちに最初にも書いたとおり、怖さから心温まるようにつくられているのはホラー作品の中でも本書しかないと言える。

他にも本書では表題作である「夜市」の他に「風の古道」が収録されている。こちらはホラー作品というよりも、むしろ伝承小説といった感じだった。