春待ち海岸カルナヴァル

恋愛には年齢の関係が無い。そのことを証明づけられている一冊と言える。だからといって本書の主人公は50代や60代ではなく、39歳の「熟女」と呼べる様な女性である。その女性は未婚であり、今の時代でも「行き遅れ」や「負け犬」と言うような言葉で結婚できない女性が罵倒されるような言葉を受けてしまう年頃である。晩婚化と呼ばれる時代でも、である。

その女性は海沿いのホテル「カルナヴァル」を経営に携わっている。本書では「経営している」という名言はないのだが、文脈からして経営しているとおぼしき表現がある事からそう推測できる。

ホテルというと、かつてロングヒットを成し遂げたドラマ「HOTEL」を思い出す。高嶋政伸の出世作であり、「姉さん、事件です」という言葉がドラマを代表する名台詞としてあげられている。

ちょっと話が反れてしまったので、ここで戻す。結婚できていない中年女性がホテルの経営をしていく中で様々なお客さんと出会う。中には父親に歳近いような男性もいれば、娘のような少女、さらには20代くらいの青年から、彼女と程近い女性など、肩書きも含めると多岐にわたるのだが、それぞれ「ワケあり」と言える様な状況の中でカルナヴァルに足を踏み入れる。そこで主人公とお客が織りなす物語は「恋愛」というよりも「愛されている」という人間的な恩恵を感じずにはいられない小説だったと言える。