東京ガールズコレクションの経済学

おそらく半年に一度ホットな話題として最もニュースに挙げられるとしたら「東京ガールズコレクション(以下:TGC)」くらいだろう。TGC自体は2005年8月に代々木第一体育館で、現在ほど認知されていなかったが、だんだんクールジャパンの機運が高まりだし、ほんの2~3年ほど前から世界中で認知されるようになった。会場も代々木第一体育館から2007年以降、横浜アリーナ、さいたまスーパーアリーナなどアリーナ会場でも行われるようになった。このTGCによってガールズ市場は伸びに伸び推計でも7000億円にまで上る。

ではなぜTGCはここまで人気イベントに成長していったのか、そして一大ガールズマーケットを席巻してきているのだろうか、それについて経済学的な観点から考察を行っているのが本書である。

第1章「一大イベントに成長した東京ガールズコレクション」
TGCは最初にも書いたように2005年に始まったのだが、当初このイベントを運営している会社は1社だけだった。しかし翌年になって新しく運営会社が設立され、現時点で2社が運営している状況である。元々ファッション業界内では注目されていた。それはどうしてなのかというと、起業プロモーションの場としてはこれ以上ない場所であること、そしてそのファッション業界を引っ張っている存在としてガールズに着目していることである。そして概要を語る上で欠かせないのが「リアルクローズ」である。元々パリコレなどのファッションショーでは新しくデザインされた衣服を見るだけで、一般の方々が着ることはできない。しかしTGCは実際に着ることができる服でショーを行うので、自分でも着ることができる親近感を持たせる事で一大イベントに成長できた要因がある。

第2章「ガールズイベントの戦略は何が正しいのか?」
もちろんTGCでは色々な戦略が組まれてイベントが行われている。メディアで言えば「クロスメディア戦略」というのがあり、携帯電話・パソコンのインターネット、さらにはテレビ・雑誌などの既存メディアに向けて情報を発信していくというものである。
他にも消費行動にも影響を与えた。消費行動というと欲求が起こるのだが、TGCでは代わりに「共有(Share)」を引き立たせるようにしている。モデルが着た服を自分で買い、それを口コミにて共有すると言うような形である。
他にも企業のコラボレーションやタイアップなどの戦略も組まれ、文字通り「全て」を巻き込んでイベントは大きくなっていったと言える。

第3章「どうしてガールズイベントは人気があるのか?」
ガールズイベントは何もTGCばかりではない。他にも「札幌コレクション」「神戸コレクション」など地方のコレクションもまたガールズイベントとして開催され、栄えた。中には終了してしまったのもあるが、完全に消えたわけではなく、新しい地方でガールズイベントがつくられるなど、イベントそのものが多様化したと言える。
本題に戻すのだが、なぜTGCをきっかけに多くのガールズイベントが開催され、人気を博しているのか、それは参加者としても参加ブランド・協賛企業それぞれにメリットがあると言うことである。もちろんメリットには得られる「モノ」もあれば、そこでしか体験できない「コト」の二面性が存在する。

第4章「市場の主役はギャルからガールズへ」
TGCをきっかけに市場がギャルからガールズになってきたのだが、そこで懸念されたのが渋谷109の苦戦である。元々ギャルのメッカと呼ばれた渋谷109だが、2011年春に24店舗の入れ替えを行うなど、大規模な変革を行っている事実がある。その変化に対応できるかどうか、今後の課題としてあげられている。

第5章「ファッション雑誌で見るガールズマーケット」
ガールズマーケットは伸びているとは言ってもそこに出版が波及しているかというとそうでは無い部分が存在する。その理由としてファッション雑誌に限らないのだが、雑誌が軒並み休刊・廃刊に追い込まれていることである。もちろんファッション雑誌も例に漏れていない。とはいえ生き残っているファッション雑誌もガールズマーケットの情報を察知して、路線を軌道修正しながら流行を追いかけていると言った状態にある。

第6章「人気の高いガールズブランド」
人気の高いガールズブランドと言ってもどういったブランドがあるのか私には想像がつかない。しかし本章ではTGCに出演したブランドを全てタイプに分けて取り上げている。もちろん人気と言ってもそれぞれであるが、考え方・嗜好の多様性から考えても多岐にわたるのは自然と言える。

第7章「ガールズマーケットのこれから―百貨店に行かない彼女たちの消費行動」
私たちのような世代は「嫌消費志向」と言われている。人それぞれなのだが、車を買う人も少なく、ましてや高級ブランドにも目が向かない。最もTGCによりシンプルにファッションをする人たちが出てきているという要因もある。本書には他にも百貨店の苦境も書かれていたが、本書が出版されたのは2011年の秋、ちょうど景気が二番底で冷え込んでいたい時代であったため、現在とは状況が異なると言うことだけは付け加えておく必要がある。

TGCはこれからも続くかも知れないし、3年以内に終わるのかも知れない。何せ流行はめまぐるしいほど早くやってきて、早く去ってしまうのだから。もちろん優孝の最先端だと言われていたスポットも苦境にあえいでいる所が現にある事を考えるとTGCがいつまでお祭り騒ぎが続くのかは分からないと言っても過言ではない。とはいえ、TGCがある意味というのはファッション業界としても、今の日本の状況にしても重要な意味があるのかも知れない、そのことについて本書を通じて経済からでも見て取れる。

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