いじめと探偵

「いじめ」と言う言葉が出たのは80年代に入ってからのことで、社会問題化したのは94年、それ以降「いじめ」が教育現場の悩みの種としてはびこり続けている。特に最近では死亡事件に発展する、あるいは大人でもゾッとするような事件まで起こっている。

そしていじめと関連してもう一つあるのが、いじめの事について探偵に調査を依頼してくるケースも少なくないという。本書は実際にいじめ調査を数多く行ってきた探偵がみたいじめの実状について迫っていくのと同時に、交渉法や解決法を伝授している。

第1章「探偵にいじめ相談が来るのはなぜか?」
著者がいじめ調査について、始めて依頼を受けたのは10年前のことであった。中高一貫教育を受けている女子中学生の親だったのだが、万引き行為に関する案件だった。その案件を調査するに、いじめの闇の深さ、そして学校や親の対応など様々なことを知ることとなったという。その案件以降続々といじめ案件がやってきて調査を進めてきたのだが、その中で相談者の傾向、そして学校が解決できること、さらに証拠集めを行った後の対応についても傾向に分けて提示している。

第2章「なぜ、いじめられている事実を親に隠すのか?」
本来であれば先生が実際に調査すべき事であるのだが、現在は探偵がいじめ調査を行っている現状がある。その理由は第5章にある「教育現場の機能不全」にも通じるものがある。
他にも親に自分がいじめられている事を隠すのかと言う話になるが、もっとも親子関係が薄くなっていると言うのも一因として挙げられている。

第3章「子供のいじめもカネとセックスがらみに」
子供のいじめはだんだんエスカレートしている・・・と書きたいところだが、実際のところ少年犯罪そのものは変わっていない、このことについては「少年犯罪データベース」というサイトでも紹介されているが、残虐な犯罪もある。
しかし「いじめ」のことについてフォーカスを当てていると、いじめそのものの「質」が変化していると言える。全体的な「質」の変化については第5章で取り上げているとして、ここではカネ・セックスに絡んだことについて取り上げられている。カネはもちろん「カツアゲ」だが、セックスは「援助交際」といったものがある。もちろんそれぞれに具体的な調査ケースを紹介しているが、読んでいる自分でもゾッとするような内容ばかりである。

第4章「低年齢化する集団レイプ、猥褻行為の強要」
いじめの中にセックスが絡んでいるものがあるが、それがもっと悪質になってくると、本性で紹介される「集団レイプ」にまで発展するという。本章では集団レイプに絡む案件についてを取り上げながら傾向について考察を行っているが、被害者にとっても加害者にとっても取り返しの付かない事態になるという。

第5章「教育現場の機能不全で、いじめの質も変化している」
いじめの現場を目撃し、注意し、懲らしめることが先生の役割であるのだが、その注意をした先生が担任からはずされるなどの事が起こっているのだという。ほかにも親からいじめの相談を受けても、侮辱をする、猥褻な行為を行うなど、セカンドレイプと呼ばれるような状況に陥っているケースもあるという。
もっともそのこともあるせいか学校の先生はいじめを咎めるどころか何もしないことを理由に先生の前ではまじめに演じて、実際は凄惨ないじめを行うこどももいるのだという。

第6章「子供をいじめから守るために、大人ができること」
いじめ相談は公的な機関もそうだが、探偵への相談も後を絶たない。しかし探偵から見て大人ができることはあるのだという。そのためには子供に対して注視をすることも大切であり、子供の声に傾けることが大切である。政府や教育委員会が行うことよりも、子供に直接向き合える親や先生が行うことによっていじめは防止することができる。

いじめは悪質化しているという声もあるのだが、本書を見るに、凶暴化していると言うよりも、今の大人たちが自らの保身のために、いじめを見て見ぬ振り、さらにはいじめに加担するケースもあるという。本書の取り上げている著者の調査を通じて、今の「いじめ」の姿を露見されたと言っても過言ではない。いじめを対策するためには表面上の事件を見ることよりも、「本当の」状況を知ることが大切であり、それを大人たちが気づき、行動することによって変化する。決して固定観念や概念にとらわれていては解決しようにもできないのである。