火山と地震の国に暮らす

日本はよく「火山大国」や「地震大国」と呼ばれている。現に前者は昨月の27日に噴火が起こり、死者は60人近くと、戦後最悪の火山災害となっている。現在も、捜索が続けられている状況にある。また後者も震度5弱以上の地震が少なくとも年に1回以上観測されており、記憶に新しい震災というと3年前の東北地方太平洋沖地震によって発生した「東日本大震災」が挙げられる。
甚大な被害を及ぼす地震と火山噴火だが、日本では今まで起こっている以上に甚大な被害が出てくるような地震・火山噴火もあるかもしれない事を考えると、減災はもちろんのこと、「科学」についても知る必要がある。そこで本書では地震・火山についての科学を知ることの大切さ、そしてそれを元にした減災の方法について提示している。

1.「科学を減災に活かす」
地震予知や火山噴火の予知の研究が進んでいるのだが、それとともに、被害を最小限にする「減災」も行っていく必要がある。それを活かした方法について、2011年に起こった東日本大震災、1995年に起こった阪神・淡路大震災、東日本大震災と同じ歳に起こった霧島火山・新燃岳の噴火、2000年の有珠山噴火をもとに紹介している。

2.「火山と地震の国に暮らす」
最近では富士山大噴火が起こりうるというようなニュースを聞くのだが、実際の所、完全にゼロというわけではない。もちろん予知が出来ればそれに越したことは無いのだが、水蒸気爆発のように予知されにくいケースもある。もっと言うと地震でも最近では南海トラフなど地震の可能性が高いところが指摘されているものの、東北地方太平洋沖地震では可能性がどちらかというと低いところで起こったことから、災害は「どこで起こるのか分からない」という現状がある。
もちろん双方の災害にビクビクしながら暮らすというのもどうかと思う。そこで本章では地震よりも火山噴火が起こった、もしくは現在も起こっている場所を中心にそこで共生する術を紹介している。

3.「科学の方法」
自然災害の中でも火山についての科学について提示している。本書のタイトルには「火山と地震」があって、「なぜ地震がないんだ」という風に思われてしまいがちだが、元々著者は火山学を専攻しているだけあって、自ら培っていた火山の研究を暮らしにどう活かしていくのかに長けている。

4.「「伝える」から「伝わる」へ」
著者が専攻している火山学についても、地震の研究を行っている地震学についても言えることなのだが、研究して考察を行うだけではなく、研究で得た成果をいかにして予知や減災に役立てるかによって研究が私たちの生活に実を結ぶかどうかが決まる。もちろん実際に火山学から減災対策を提示するなど、私たちにどのようにして「伝え」、私たちはどのようにして「伝わる」のか、これは研究している方々にとって、自身の研究に次いで重要な課題と言える。

5.「市民のための科学」
科学は科学者のものではない。科学が研究され、製品が作られたり、火山や地震予知に使われたり、減災に役立てたりと、生活に密着することが色々とある。しかし最近では「理科離れ」と言う言葉が出てきているのだが、科学と生活の橋渡し役となる人物が少なくなっているのもあるのかもしれない。

火山や地震がいつどこで起きるのか分からない。最初に書いたとおり現に起こっている所でも「まさか」と呼ばれる場所・タイミングで起こっている事実がある。当然一人一人の防災運動も必要なのだが、火山や地震のメカニズムを知り、なおかつ減災に役立てることは何も研究者ばかりの仕事ではない。私たちでも少なからず役立てることが出来るということを本書は教えてくれる。