承認欲求―「認められたい」をどう活かすか?

「承認欲求」は簡単に言えば「人から認められる」ことを求める感情にある。ここ最近では金銭的な欲求よりも求められているものとして挙げられているのだが、「承認」を行い、認め合う職場になっていくことによって生産性が向上するというような好影響をもたらした企業は少なくない。しかしどのようにして「承認」を行えば良いのか分からない、あるいはそもそも「承認」する必要があるのか疑問に思っている方も少なくない。

本書は「承認欲求」のメカニズムを説き明かすのと同時に、現在の社会において、いかに「承認欲求」が必要なのかも明かしている。

第1章「「経済人」の顔をした「承認人」」
かつて日本の会社は「終身雇用制」「年功序列」がまかり通っていた。しかしバブル崩壊後の「牛縄田10年」ないし「失われた20年」の中で制度・風潮が崩壊され、「働く」ことへの概念も変化してきた。バブル崩壊前であれば安定した生活、あるいはありったけのお金とモノが欲求にあったのだが、今となってはお金への欲求は薄れ、逆に「やりがい」や「成長」、「達成感」といったことを求めるようになってきた。そういう時代から「承認」を求め始めた。

第2章「日本人はどう認められたいのか?」
私自身会社員だった頃は「仕事中毒」を絵に描いたような人間だった。しかしその時は人から認められたいという感情も無いし、ましてやお金をたくさんも受けようとも思っていなかった。1秒でも多く素直な気持ちで仕事をしていたかっただけだった。
私の様に長く残業している人は本章を読んでみてけっこういるのだという。著者曰く「ニューハードワーカー(p.50より)」と呼ばれるものであり、「早く帰りたくない」ということからハードワーカーになっていくのだという。また、若者が早くに退職する要因として「ステップアップ」などがあるのだが、実際の所、ある「承認」の渇望があった事が挙げられる。

第3章「<表の承認>が組織を救う」
本省に入る前に<表の承認>と、その対になる<裏の承認>について書いておく必要がある。

<表の承認>・・・人々の能力や業績を称賛すること
<裏の承認>・・・和や序列を大切にし、ミスしないことをよしとすること(p.14より)

日本の社会は主に<表の承認>よりも、<裏の承認>を良しとしてきた。
しかし本章では<表の承認>を与えることによって組織がより潤滑できることを立証づけて説明している。もっとも米国は<表の承認>を重視しており、日本では<裏の承認>を重視していることを念頭に置きつつ、組織構造の強さを比較している所は必見である。

第4章「京都に学ぶ日本型承認の方法」
では<表の承認>をどのように行えば良いのか、急に欧米の方法を取り入れるにも抵抗があるとしたら、本章の様に「京都」をモデルケースとして取り入れるのも良い。しかし京都というと保守的な風潮が強く、出る杭が打たれるような環境にあるのではないか、と思われがちだが、京都にも二面性があり、伝統を重んじる所もあれば、それに対抗する「異端」も出やすい。その「異端」こそベンチャー企業などである。そのことにより、京都では<裏の承認>ばかり重んじられるように思えて、実は<表の承認>も巧妙ながら出している風潮があるという。

第5章「認められるための戦略―「農村モデル」と「京都モデル」」
京都モデルの他にも「農村モデル」がある。こちらも「ムラ社会」と呼ばれているだけあり「出る杭は打たれる」環境にあるが、「出過ぎた杭」の場合は打たれるどころか、「引き抜かれる」環境にある。認められるためのモデルケースは「京都」、または「農村」のどちらかの戦略をすると良い、もちろん自分自身が気に入ったものを選ぶことである。

これから「承認欲求」が重要視される社会になってくる。その「承認欲求」をいかにしてくすぐらせるのか、欲求している側もいかにして得るための戦略を立てるのか重要になってくる。本書の他にも「承認欲求」をくすぐらせるようなノウハウ本が出てくるのだが、全ては本書に帰着するのかもしれない。