万引きの文化史

本書は「万引き」を歴史的な見地から紐解いた一冊であるが、そもそも「万引き」と言うと物騒なものでるのだが、どうして「万引き」が成り立っていき、どのような心理でもって行われてきたのか、是非知りたいと思い手に取った。

第1部「万引きの歴史」
万引きそのものの歴史は、人物の歴史とイコールと言える。しかし確認されている最古の「万引き」、というより「盗み」は紀元前2500年頃にある「ハンブラム法典」によるもので、貧しいものからの窃盗についてもっとも厳しいとされたことから始まる。元々は法典から始まったのだが、それから古代ギリシャの時代になると「倫理」の観点から考察が行わた。実際の所万引きをはじめとした「盗み」そのものが重罪を科せられた。

第2部「実態」

「万引きには五百年以上もの歴史があるが、疾病とみなすにしろ犯罪とみなすにしろ、近年まではおもに女性がするものと考えられていた。ところが1980年代から事情が変わってきた。」(p.114より)

500年以上と言っても幅があり、もっとも日本とは異なる事情なのかもしれないが、著者の国であるアメリカではかつて女性の方が万引きをする人が多かったのだという。日本ではどうなっているかについては、当然の如く触れられていないため不明であるが、少なくとも「女性の方が多い」理由として女性解放運動など女性の社会進出が出来ていなかったのも一因としてある。しかし現在では老若男女問わず万引きが行われており、日本では高齢者の万引きも相次いでいると言う話を聞いたことがある。

第3部「病理」
そもそも人はなぜ万引きをやってしまうのか、理由として「スリルがある」と言うのがあるという。他にも常習犯になってくると「万引きをしないと生きていけない」という依存症になるケースも本章で紹介されている。日本ではどうかというと、スリルの他にも高齢者に多く見かけるのが「捕まりたかった」「誰かに見てもらいたかった」というような、孤独を紛らわす、あるいは気づいてもらうために万引きを行うケースもある。

第4部「対応策」
万引きの対策としてあげられるのが警備や警戒の強化というのがある。他にも私服警備員やGメンを雇い、気づかないところで見張り、犯行が及んだら取り押さえると言うような事をやるというのもかつてTV番組で放映されたほど有名である。他にも依存症である場合は、カウンセリングを行うなど精神疾患を治す処方も行われている。

万引きの犯罪は今でもなくなっていない。それに対して撲滅をするというのも長い歴史がある事から難しい様に思えるが、実際に個人・店単位で対策が行われている事も事実としてある。では根本的にどうしたら良いのか、調べて見ればみるほど根本的な「人はなぜ万引きをするのか?」という疑問が浮かんできてならない。それほど根深いものであることを本書を通じて突きつけられた。