ネットデフレ ~IT社会が生み出した負のスパイラル~

「ネットデフレ」とはインターネットの隆盛により、経済の悪循環が起こることを総称している。その原因には「インターネットの欠陥」というのがある。しかしどのような「欠陥」があるのか正直言って疑問を持ってしまうのだが、果たして何なのか、本書はその「欠陥」の正体とその対策について取り上げている。

第1章「知られざるEコマースの現状」
「Eコマース(電子商取引)」は小売業やサービス業ほどではないものの、年々拡大傾向にある。しかしその実情は安価で販売することができることからデフレを助長させていること、さらにEコマースのモデル最大の欠陥として「人的サービス」が難しいことが挙げられる。

第2章「問い直されるネット広告の価値」
ネット広告もまた拡大傾向にある。かつてからある看板広告やTVのCMなどによる公国から離れ、インターネットによる広告にシフトしていったこともある。また、ネット広告自体もTwitterやFacebookなどのSNSが出てきたことにより、SNSに対して広告を行う事にもシフトして行っている。しかしネット広告を行ったところでコンバージョンなど、広告にクリックし、商品やサービスを購入するのかというとそうでは無いと言うことを著者は指摘している。

第3章「ネットデフレとは」
「デフレ」自体は、

「商品が売れない→値下げする→企業収益が悪化する→給与が下がる→商品を買わない→商品が売れない→…」(p.74より)

という循環である。メディアでは「デフレスパイラル」と呼ばれる。ではネットの世界で起こっている「ネットデフレ」とはいったいどのような物かと言うと、「付加価値が無くなる」「価格比較などを行う事で安価のものの購入が集中」する事により、デフレが生じるのだという。

第4章「ネットデフレを生み出すネットの欠陥」
ネットデフレを生み出す欠陥は人的サービスがない事にある。セルフサービスなどサービスを「自動化」したことが挙げられる。

第5章「ネットを進化させる“ブラウザ通信チャネル”」
そのネットの欠陥を解決させるものとして著者は「ブラウザ通信チャネル」を提唱している。ウェブ閲覧とコミュニケーションをリンクすることができる。ちなみにコミュニケーションは「チャットワーク」の形でリアルタイムにて文字にて会話をすると言うことを行う。そのモデルケースとして「Sync+(シンクプラス)」が挙げられるのだが、実際に稼働しているかは不明である(会社HPも会社情報に提示されているが既に閉鎖されている)。

第6章「進化したネットの経済効果」
第5章で紹介したものを元にさらなるモデルケースをもって、「Eコマース」のあり方を提示しているのだが、本書が出版されたのが2011年なので、閉鎖されている、あるいは別のHPに変更されているため、一概に著者が提示されたチャネルが成功しているかというと必ずしも言えない。

ネットデフレの概念自体は確かにその通りかもしれないが、その解消方法はあるのかと言うと、私自身も「わからない」としか言いようがない。もちろん著者が取り上げたモデルは果たして成功しているのかどうか分からないのである。本書は提示した方法が広がるべきと言うよりもむしろネットに潜んでいる問題を知ることが大切になる。