一流の研究者に求められる資質

昨年最も話題となったのは、理研と小保方晴子氏の話題である。昨年のはじめにSTAP細胞が発見され、話題となったのだが、論文の中の画像引用について疑惑が生じ、一転批判の的となった。その後再検証を行った結果、STAP細胞は見つからず、結局小保方氏は理研を退職し、いったんは終結となった。

この一連の経緯を見ていて思ったのは、本書のタイトルにある研究者の資質って何なのか、そして科学ジャーナリズムとは何なのかについてである。今回は前者について知る一冊である。

第1章「ITと感性」
ITは今の生活でも不可欠なのだが、研究でも重要な役割を持っている。論文作成はもちろんのこと、実験でもIT機器をはじめとした機会は必要になってくる。しかしITを使うだけでは研究者として研究するのは非常に難しい。それとともに「五感」もあれば、「第六感」と呼ばれる「感性」もまた磨く必要がある。

第2章「一流の研究者に求められる資質と能力」
一流・二流・三流を分けるものとして「こだわり」や「信念」、そして前章で述べた「感性」が挙げられる。もちろん感性によって得られた仮説を実証する必要があるのだが、その検証をするために研究・実験が必要になる。もちろんそれらは世間の常識を絶対視せず、常に疑い、新しいものを発見して行くものである。

第3章「師弟関係の重要性」
落語や歌舞伎などの伝統芸能には師弟関係は必要になるのだが、これは科学に限らない研究者にも同じことが言える。最初に書いた小保方の場合は元京都大学再生医科学研究所教授の故・笹井芳樹氏がいる。もちろんノーベル賞を受賞した方々のほとんどは師弟関係を持っており、師弟共々ノーベル賞を受賞したケースもある。そのルーツも併せて師弟関係の重要性について考察を行っている。

第4章「評価の評価」
論文や研究にまつわる評価は人それぞれであるが、はたしてそれが平等に、かつ明確・正確に評価できているか、というのがある。はたして「平等」はあり得るのか、そしてどう行った形で「平等」に評価すべきなのか、本章ではそのことについて自らの経験をもとに提示している。

「一流」と呼ばれる研究者は日本には存在することは間違いないが、その絶対的な人数は果たして多いのかというと、不明である。しかし一流の研究者としてなにを求めているのか、そしてどう行った研究を行うべきか、抽象的ではあるものの、理解はできた。