なぜ、横浜中華街に人が集まるのか

京浜東北・根岸線の石川町駅を降りてすぐのところに「横浜中華街」がある。私自身も仕事・プライベートの両方で何度も足を踏み入れたことがあるのだが、横浜にいながら、まるで中国にいるような空間になる。そこにはもちろんコンビニもあるのだが、ほとんどの店員が中国人であるから、コンビニもまた中華街の雰囲気が浸透している。

中華街は、平日になると仕事でもサラリーマンで人が集まり、休日になると観光客で平日以上に人が集まる。しかしなぜ人が集まるのか、本書は横浜中華街そのものの歴史とともに考察を行っている。

第一章「「町おこし」は、なぜむずかしいのか」

「現状維持では、後退するばかりである。」

これはディズニーの創設者であるウォルト・ディズニーの言葉である。町はいずれも現状維持を求めているわけでは無いのだが、変化を嫌う風潮も少なくない。そのため町おこしをしようにもできない、もしくは現状維持のような事を行う事によってかえって衰退の一途を辿ってしまうケースもある。町おこしと考えると「行政」も首を突っ込む、あるいは主導で行うケースもある。

第二章「横浜中華街「町おこし」の歴史」
では、横浜中華街の町おこしはどうなのか。それは横浜中華街そのものの歴史から始まる。本章でいう歴史の始まりは1853年にペリーが浦賀沖に来航した頃から始まる。その翌年、横浜が開港され外交区人が次々と入ってきた。それと同時に中国人マネージャーの商人が横浜にやってきて、外国人と日本人の仲介役を担った。これをきっかけに中国人が次々と横浜にやってきて一つの町ができた。これが「横浜唐人街」、のちの「横浜中華街」となった。

第三章「横浜中華街発展の秘密」
横浜中華街が発展した理由として「クラスター理論」を用いて考察を行っている。他にも横浜中華街の「食」についても言及されており、本場中国の味と横浜中華街の味の違い、そして料理のヴァリエーションなど、他の中華街とは異なるアプローチも併せて取り上げている。

第四章「「町おこし」「町づくり」成功のためのルール」
横浜中華街の発展を例に、では「町おこし」や「町づくり」を成功するためにはどうしたらよいのか。人選はもちろんのこと、リーダーのあり方、そして行政との付き合い方、失敗例などを元に「ルール」として示している。

第五章「町は、経営で再生する」
会社も町もまた「経営」と言えるのだが、町づくりも「経営」を持ち込むことによって利益をもたらすだけでは無く、町の人々が充実することができ、なおかつ笑顔になる事ができる。

横浜中華街は日本であるにもかかわらず、日本らしからぬ空間が包まれている。その空間によって横浜中華街に魅入られた方々も少なくなく、横浜を代表するスポットにまで上り詰めた。横浜中華街は今でも観光名所の一つとして存在し続けている。その経緯を証明すると共に、これからの町づくりのモデルケースとなる一冊である。