愛と人生

かつて「男はつらいよ」と言う作品があった。その主人公である車寅次郎役には、長年渥美清がやっていた。その作品で当時子役だった秀吉は、寅さんと共に行方不明の母を探す旅に出たという一冊である。本書では「寅さん小説」という見慣れない分野にて定義づけられている。

そう考えると本書は「男はつらいよ」を知っている・知らないで評価は大きく分かれる。知っている方々であれば寅さんや秀吉を想像することができ、ストーリーもすんなり入ってくる。それでいて感動の度合いも異なってくる。しかし知らない方々だと、感動することはするのだが、寅さんや秀吉とはどのような人物なのか把握しきれなくなってしまう。

おそらく著者は本書のために「男はつらいよ」を何度も視聴し、その中で本書の構想を生み出したと言える。しかし寅さんや秀吉の再現をどこまでやっていくか、苦慮したのかもしれないが、本書の帯にある「男はつらいよ」の監督である山田洋次氏が共感していることから、限りなく忠実に再現されていると言っても過言ではない。

私自身「男はつらいよ」という映画は観たことがあるのだが、最後に見たのは10年以上も前の事なので、ストーリーやキャラクターはうろ覚えの状態だった。しかし本書を読むと、文体から「男はつらいよ」の映画がフラッシュバックした感覚さえある。もっと言うと「男はつらいよ」を観直すことで、本書の味わいはさらに深まっていくという気がした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました