日台の「心と心の絆」~素晴らしき日本人へ

日本と台湾の国交は「日中国交正常化」と同時に断絶してしまったのだが、政治的な国交を超えて、精神的な交流は今もなお続いている。その象徴的な出来事として東日本大震災における200億円もの義援金や、2013年に開催されたWBCでの台湾代表が行ったお辞儀が挙げられる。

台湾統治の時代以前は、「化外の地(げがいのち・天子の支配が及んでいない土地)」と呼ばれるような存在だったのだが、日本統治によって目覚ましい発展をした。それと同時に台湾人に芽生えたものとして「日本精神」が挙げられる。
本書は台湾と日本人の「絆」、そして台湾に芽生えた日本人の魂は何なのか、元台湾総統で、台湾の民主化に成功した政治家であり、私の尊敬する人物である李登輝氏が明かしている。

第一章「素晴らしき「日本精神」」
「日本精神」は台湾でもよく使われており台湾語では「リップンチェンシン」と読まれている。この精神は台湾統治の時代から受け継がれている。では「日本精神」とはどのようなものか、一言で言うと「高い精神性(武士道精神)」が挙げられる。そのルーツとなったのは著者が「武士道解題」という本を出版している通り、新渡戸稲造の「武士道」を取り上げている。他にも日本統治において、台湾にどのような教育をもたらしたのか、当時の状況をもとに綴られている。

第二章「日本精神と台湾人」
日本と台湾の絆は100年以上の時を経て今もなお続いている。先ほど台湾統治時代に日本が持っている「日本精神」がついた、というのもあるのだが、他にも後藤新平をはじめとした方々がインフラを整えたことも日本がもたらしたものとして挙げている。「化外の地」と呼ばれたところから急速に近代化し、台湾もまた教育水準が飛躍的にあがっていった。それとともに「台湾人」としてのアイデンティティも芽生えたのだが、それが大東亜戦争後の「二・二八事件」での国民党に対する抵抗につながった。その後ながらく国民党、もとい蒋介石一族による独裁政治が始まった。しかし1987年に戒厳令が解除され、著者が総統になり、台湾は民主化への道を歩み始めた。

第三章「日本と台湾の同胞たちへ」
本章では日本と台湾、両方の方々に対して、指導者とはどういう存在であるべきか、信仰の重要性、「悪役」を演じることの重要性について説いている。併せて著者自身の生い立ちと思想の変遷も綴られている。

第四章「一問一答・李登輝先生に聴く」
これまでのことを聞き手からの質問に対して「一問一答」形式にて答えている。これまでのことはもちろん、日台関係の歴史、東日本大震災などが取り上げられている。

日本と台湾の歴史は長く、そして台湾には日本人にとって忘れられていたかつての「日本」の姿がここにある。その姿を著者の主張をもって知ることができる。本書の冒頭にも書かれているが、本書こそ日本人全員が読むべき一冊と言える一冊である。