組織を変える“常識”―適応モデルで診断する

会社にしても、部署にしても、プロジェクトにしても、「組織」と呼ばれる。組織は日本に限らず、社会において重要な役割を担っているが、組織によっては、良い効果をもたらすこともあれば、悪い効果をもたらすこともある。もっと言えば組織は日々刻々と変化するのだが、もちろん変わらないところもある。

玉虫色の答えになってしまったのだが、「組織」は一つの「枠組み」であり、そこでまかり通る「常識」が存在する。その枠組みの本質とは何か、そして適応するためにはどうしたらいいのか、そしてどう「変化」したら良いのかについて提示したのが本書である。

第1章「組織とは何か」
「組織」と言う言葉を辞書で開いてみると、

「1.組み立てること。組み合わせて一つのまとまりを作ること。
 2.織物で緯(よこ)糸と経(たて)糸とを組み合わせること。
 3.ほぼ同形・同大で、働きも似通った細胞の集団。集まって器官を構成する。動物では結合組織・筋組織・神経組織、植物では柔組織・表皮(組織)などがある。
 4.ある目的を達成するために、分化した役割を持つ個人や下位集団から構成される集団」
「広辞苑 第六版」より)

とある。人々の集団として成り立つ枠組みとしてある「組織」は、仕事の効率化を図ることもあれば、一人ではできないような行動を成し遂げることができる。もちろんそのためには「協同」や「調整」を行っていく必要がある。また組織が固まっていくと「ルール」や「常識」がつくられていく。

第2章「組織の適応モデル」
その組織について、いかにして「適応」するかを説いているが、具体的に「社会」や「企業」など対象によって、適応の仕方が異なる。
ここではいろいろな状況に対応するため「総論」として「適応」すべきかを提示しているが、その「適応」は今の環境と組織内の「常識」が大きく関わってくる。

第3章「組織の革新局面と保守局面」
組織が成長していくためには「革新」をしていく必要があるのだが、それと同時に、組織の根幹などを「保守」していく必要がある。しかしその「革新」の部分と「保守」の部分を巡って、組織内で対立が発生するとがあるのだが、その兼ね合いをどうするべきか、トップとなるリーダーの役割をはじめ、メンバーの役割について提示している。

第4章「組織の分類」
組織の分類について、本章では以下の通り分類している。

1.鈍重型組織
2.慎重型組織
3.性急型組織
4.試行型組織

上記の4つの組織にはそれぞれの特性が存在するが、どのような特性を持つのかについて、国内外の組織事例を引き合いに出して取り上げている。

第5章「組織の先行的適応」
組織の離合集散は何度も起こる。そう言った状況の中で新しい考え方や活動も行われるわけなのだが、
「人間組織が自らが想造した環境に適応する」(p.147より)
という概念を「先行的適応」と本章にて定義されている。では、いかにして「先行的適応」を行っていくか、その有名な例として松下電器産業(現:パナソニック)を事例に取り上げている。

第6章「組織のコミュニケーション」
組織を円滑なものにしていくためには「コミュニケーション」が欠かせない。しかし、コミュニケーションはいかにしてつくっていくか、フェイストゥフェイスの会話のみならず、メールやチャットなどのツールも充実しているが、コミュニケーションのあり方は集団によって異なり、なおかつどのようなツールを用いても概念は変わりない。

組織においていかに「常識」をつくっていくか、そして他の組織や社会、企業などに適応していくか、問われながらも変化していくことが重要になってくる。しかし組織に限らず、日本人は「変化」を忌み嫌う。「変化」は生き残るためには重要な要素としてあるのだが、果たしてどのように「変化」していくべきか。それは本書の概念を知り、組織にあわせて考え、行動していく他ない。