これからお祈りにいきます

「祈り」は宗教特有の物のように見えるのだが、実際には宗教に関係無く、むしろ地域の慣習でも、人々の日常のなかでも存在する。

本書は奇妙な祭りを慣習にしている町で育った高校生の話なのだが、父が不倫中、母も現実逃避、弟は不登校と、家庭環境はまさに「ガタガタ」と言える様な状況にある。高校生なので、アルバイトもしているのだが、その上司にも恵まれず、イライラの募る毎日を送っていたという。そのような心情もあって祭りに対しても消極的だったのだが、その祭りに参加したときに思い馳せた「祈り」はその主人公の心境を変化させるにはちょうど良いほどだった。最も主人公はイライラ感から天を呪うような心境に陥っていたため、「祈る」ということは何とも新鮮だったのかも知れない。脱力感を持ちつつも、祈りの大切さを知る事のできた一冊だった。