通販―「不況知らず」の業界研究

今年の1月16日にテレビ通販の旗手と言われたジャパネットたかた社長の高田明氏が社長をはじめとした全役職を退任し、後任として明氏の長男である旭人氏が社長になった。このニュースは通販業界に関わらず、日本中で話題をさらっていったのだが、そこで「通販業界」の歴史について紐解いていきたいと思い、本書を手に取った。

第1章「始まりは西部劇の世界―通販の起源」
通販の起源はアメリカではまさに「西部劇」と呼ばれた19世紀後半に、モンゴメリー社とシアーズ社の2つの小売業がカタログを配布し、その情報をもとに手紙を使った販売方法で行われたという。日本でも明治期にアメリカとは異なるものの、カタログを元に手紙のやりとりを行い、販売にこぎ着ける活動があったことから、日本でも明治の頃には通販の概念は確立していた。

第2章「昔も今もベースは「紙」―カタログ通販の多様性」
この頃の通販の手段は、連絡も含めて「紙」しかなかった。それは、現在でも新聞の折り込み広告はもちろんのこと、通販会社によってはカタログ誌が送られる、あるいは近場のスーパーなどで無料配布されるといった事が挙げられる。もちろん時代は変わっても「紙」を使った「ダイレクトメール」と言うのもあり、通販のベースは「紙」であることは未だに揺らいでいない。

第3章「セールスマンは「公共の電波」―テレビ通販の威力」
とはいえ販売方法は時代と共に変化を遂げるようになった。その一つとしてテレビがでてきたことにある。現在でこそ地上波では朝・昼・深夜と通販番組が放送され、CSには通販専門チャンネルができるほどにまでなった。しかし通販番組が始まる以前は「テレビ局が物を売るなどもってのほか(p.80より)」という声が強く、通販業界に対してもテレビ進出の齋には、風当たりが強かった。その壁をぶち破ったのは、フジテレビの成長させたキーマンの一人であった、フジサンケイグループ会議(フジテレビや産経新聞などをグループ化した所)の鹿内信隆議長(当時)だった。その鹿内議長により、「東京ホームジョッキー」という情報番組にて、テレビ通販が開始されたのである。
その後続々と通販会社がテレビに参入し、通販会社によっては独自のテレビスタジオを抱えて、商品を紹介すると言ったスタイルをつくった(ジャパネットたかたもその一つに挙げられる)。

第4章「一人と世界をつなぐ―ネット通販の爆発力」
そして通販はネットの世界にも進出してきた。いわゆる「e-コマース」と呼ばれるものである。現在ではYahoo!や楽天などのバーチャル・モールができ、ネット通販の専門店もできるようになった。また買物難民対策の一環として「ネットスーパー」もできる様になり、嗜好品はもちろんのこと、日用品や食料品などほぼ全ての商品をネット通販で買えるようになった。

第5章「ポケットの中の百貨店―ケータイ通販の未来」
通販は紙媒体からテレビ・ラジオ、ネット、そして携帯電話が出てくる様になってから携帯サイト・スマホサイトでもって購買ができる様になっていった。もちろんネット通販会社がケータイ通販に参入する流れもあれば、ケータイ通販会社が設立し、専門に取り扱うというような業者も出てきた。

第6章「通販2.0の方向性と未来―次世代通販を読む」
かつてテレビ通販が出てきた頃は「メディアミックス」が主流だった。しかしこれからは双方向で商品を紹介したり、購買したりするクロスメディアの時代に入ってきた。特に印象づけられるのは、ネット通販で商品の声を「レビュー」と言う形で残すという方法がある。

通販も時代と共に変わっているのだが、どのように変わっていったのか、どのような歴史を辿っていったのか、正直言って本書に出会うまでは良く分からなかった。今も当たり前のようにある通販は、紙に始まり、紙自体は存続したままに、テレビ・ネットなどの変化にも対応していっている。もちろんそれにより業界も変化が起こっているのだが、その中でこれからの技術革新により、通販はどのような方向に向くのか、それについても知りたいとも思った。