花嫁はなぜ顔を隠すのか

結婚式に出席したことはこれまで1回か2回くらいしかないのだが、結婚式にて花嫁は和式だと白無垢、様式だとウェディングドレスをまとって登場する。しかし前者の場合は「角隠し」、後者の場合は「ヴェール」でもって顔を隠して登場する。両方とも「はじらい」という意味合いで表現されるのだが、そもそも「角隠し」や「ヴェール」はなぜつくられたのか、どのような歴史を辿っていったのか、本書はそのことについて取り上げている。

第一章「花嫁はなぜ角隠しをつけるのか」
「角隠し」は辞書で調べてみると、

「浄土真宗門徒の女性が寺参りの時に用いたかぶりもの。幅およそ12センチメートル、長さ72センチメートルの白絹(裏は紅絹(もみ))を前髪にかぶせ、後で二つ折にして回し、髷(まげ)の後上で留めておくもの。現在では、婚礼の時に花嫁がかぶる頭飾り」「広辞苑 第六版」より)

とある。元々仏教から来ているのだが、歴史的な起源となったのは、本章にて取り上げられている物として平安時代頃に成立した「竹取物語」から始まっている。竹取物語では帝につかまえられたのだが、面(顔)をふさぐために覆っていたと言われているが、実際に角隠しを使っているというよりも袖を使って顔を隠しているさまを表している。やがて扇など使うようになり、「顔隠し」というかぶりものが誕生し、それが「角隠し」の元となったという。しかし「角隠し」の目的は顔隠し以外にも嫉妬を防ぐための「まじない」など諸説存在する。

第二章「花嫁はなぜヴェールを被るのか」
続いてヴェールである。日本ではウェディングドレスに用いられるものが一般的に知られているが、他国では婚礼では白のヴェールを、葬祭では黒のヴェールをつける習慣を持っている所、あるいはヴェールを四六時中つける習慣を持つところも存在するため、婚礼以外にも使われる。ただ本書はあくまで「花嫁」であるため、婚礼にフォーカスを当てることとする。
元々ヴェールは古代ローマ時代からそれらしきものは存在したという。その出所としては「新約聖書」や「コリント人への第一の手紙」などが挙げられる。この頃はヴェールを含めたウェディングドレス自体、「処女」を象徴づけるなど宗教的な理由にて用いられたという。

「角隠し」にしても、「ヴェール」にしても、顔を隠す道具として用いられている、あるいは婚礼で使われるものとして用いられている共通点は存在するのだが、発祥や宗教的要素、さらには歴史も大きく異なる。今となっては日本における婚礼では和式にしても、様式にしても自分たちの好きなように選ぶ事ができるようになったのだが、歴史的な概念を忘れてしまっているのではないかと考えて本書を手に取った。実際に読んでみると、宗教的要素も強く、それでいて、歴史の深さを思い知らされたと言っても過言ではない。