ブラック企業~日本を食いつぶす妖怪

昨年・一昨年あたりから「ブラック企業」という言葉が異様に叫ばれるようになったのだが、私が就職活動をしていた時から、某掲示板サイトなどでそういった言葉が出てきているため、最近とはいえ、2~3年前に新しく出てきたというわけではない。もちろん企業はすべてブラックだというわけではないし、人を一生懸命育てる企業もあるのだが、企業によっては人を単なる使い捨て道具としてしか考えていない企業もある実態もある。

本書は、そのブラック企業の実態はいったいどのようなものか、そして就職・転職される方々がブラック企業を回避するため、あるいは、身を守るための対策、そして日本単位でブラック企業を減らし、撲滅するための対策には何があるのかについて提示している。

第1部「個人的被害としてのブラック企業」
第1章「ブラック企業の実態」
「ブラック企業」と言う言葉が使われ始めたのは、2000年代後半のことである。同じ時期に生まれた言葉として「ニート」が挙げられるのだが、そういった言葉が乱舞することにより、若者に対するバッシングが広がりを見せていた。そもそもブラック企業は、

「俗に,従業員に対し劣悪な条件での労働を強要したり、暴力や人権侵害などの違法な対応を行う企業」「大辞林 第三版」より)

という現象にある。そういうことを考えると今に始まったことではなく、戦前にあったプロレタリア文学の「蟹工船」の事を表されている通り、戦前の頃から存在した。しかし「蟹工船」と違うのは技術であり人間関係などの変化により、研修をはじめ、仕事の内容に至るまで精神的に追いつめるようなやり方を行っている所にある。

第2章「若者を死に至らしめるブラック企業」
いわゆる「過労死」や「過労自殺」に追い込ませるようなやり口のことを指している。その事例として、いくつかの企業事例を取り上げている。

第3章「ブラック企業のパターンと見分け方」
そもそも「ブラック企業」と呼ばれるパターンにはどのようなものがあるのだろうか。本章では求人広告をはじめ、社員形態、労働環境などをもとに解き明かしている。

第4章「ブラック企業の辞めさせる技術」
元々、日本における労働法では「解雇」の規定は非常に厳しい。もちろん不当解雇となれば裁判沙汰になることもある。しかしブラック企業は「解雇」をさせずに、自主退職をさせるような事をやっているという。しかもやり口は社員を精神的な病をかからせるようなこともあるという。

第5章「ブラック企業から身を守る」
では、ブラック企業から自分自身のみを守るためにはどうしたらいいのか、戦略をはじめとした個人的な対応方法について取り上げている。

第2部「社会問題としてのブラック企業」
第6章「ブラック企業が日本を食い潰す」
第1部では「ブラック企業」と「個人」というどちらかというとミクロの観点から取り上げたのだが、ここでは「ブラック企業」と「日本」というマクロの観点から取り上げられている。
本章ではなぜ日本においてブラック企業が生まれたのか、それについて社会の現状とともに考察を行っている。

第7章「日本型雇用が生み出したブラック企業の構造」
本章では労働状況を元に「日本型雇用」の功罪として、どうして「ブラック企業」ができてしまったのか、そのことについて取り上げている。

第8章「ブラック企業への社会的対策」
「社会的対策」は、政府をはじめ、自治体単位での対策が不可欠となる。もちろん法律により規則や罰則を強化するにも限界があり、抜け穴も出てくる。悪質な企業になるとことあるごとに法解釈を悪用してくる。それを防止するためにどうしたらいいのか、政策・教育の観点から取り上げている。

企業に「優良企業」があれば、逆の「ブラック企業」は存在する。表裏・善悪にもあるように、必ず存在しうるものである。そのため撲滅は非常に難しい。しかしそれを回避する方法であれば存在する。そういう意味では、就職・転職をする方に対して、防衛策として参考資料となる一冊といえる。