朗読のススメ

本書の著者であり、「サザエさん」の波平役で有名な声優・永井一郎氏が昨年の1月に逝去した。その永井氏が「朗読」にまつわる本を上梓された事は自分自身知らなかった。もっともなぜ永井氏は本書を上梓したのか、そのことを疑問に思ってならなかったのだが、著者は声優だけではなく、俳優としても活躍しており、その中で「読む」と言うことを重要視していた。そして本書が出版された当時は「音読」や「朗読」がブームになっていることから、永井氏がもっとも重要視していた「声に出して読む」事を自らの経験でもって語りたかったのではないかと思い、本書は生まれたのかもしれない。本書は永井氏の経験をもとにした朗読のススメについて書かれた一冊である。

第1章「声について」
声を出すことはいろいろなメリットがある。「体の緊張を解く」「プレッシャーを克服する」「他人の心に伝える」と言うのがある。ちなみに本章で定義している「声」は朗読だけではなく、歌なども指している。

第2章「自分の朗読とは」
元々永井氏は劇団に入る前、養成所に通っていたのだが、そこで朗読の授業もあったのだが、そこでは講師のこともあってか愉しさはなかったという。しかし俳優や声優としての仕事を通じて、台本を朗読することになり、そこで朗読の愉しさを知ることができたという。

第3章「朗読の基礎的技術について」
朗読をするためにも基本的な「技術」は必要であるという。どのようなものが必要なのかというと、「姿勢」や「呼吸」「音圧」「発音」などが挙げられる。

第4章「技術とイメージのはざま」
発声などの技術のほかにも表現をする、あるいはイメージすることも重要であるのだが、そのなかで「言葉」とは何かを考える必要がある。もちろん言葉の中にはアクセントやイントネーションなども含まれるが、それらは内容の捉え方によって大きく異なるのだという。

第5章「解いておきたい誤解」
朗読には様々な「誤解」が生じるのだという。その「誤解」には、どう言ったものがあるのだろうか。本章において取りあげられている「誤解」には「女性」や「方言」などが挙げられている。

第6章「技術を超えて」
朗読は何も技術ばかりがクローズアップされるわけではない。表現やイメージをすることは技術以上に大切であり、物語を伝えるための大事な要素である。ほかにも朗読と言っても声に出して読むだけではなく、何も言わない「間」もまた表現の一つである。そして客観性も大切であることも本章にて言及している。

朗読は単純にかかれているものを読めばいいと言うわけではない。読み方にしても発音や音圧もあり、抑揚や間などの表現も必要になってくる。それは長年俳優や声優の仕事を続けてきたからでこそ、朗読の奥深さを知ることができたといえる。本書はそのことについて教えてくれる。