父のひと粒、太陽のギフト

ニートの生活から脱するため、紹介されたとある会社で働くことになった主人公。しかし仕事場はまさに「農業」だった。しかし主人公は元々実家が農業をやっていたことから、働くことへの意欲を見出すことができなかった。

しかしいざ働いて行くにつれ、農業の楽しさ、働くことの楽しさを見出していった。その最中、はたいている農場で、変死体が見つかってしまう。その「死」の真相は、農村、とうよりも「集落」というコミュニティで起こりうるものが存在した。

本書はミステリー作品で在るが、ミステリー独特の緊迫感がなく、むしろ農村で働くことの楽しさと厳しさ、そして農村ならではの事情がたっぷりと詰まっており、本書の帯にも書かれている通り、今農業が抱えている問題をミステリーとして描いている。そのため、ミステリーであるが、社会問題を映し出しつつ、現実を訴える小説である。私自身は農家ではないものの、地元で農業をやっている知り合いもいるため、農業に関する現実はいくつか知っているが、その現実もまざまざと映し出していると言っても過言ではない一冊だった。