盤上の人生 盤外の勝負

現在「将棋電王戦FINAL」が行われており、ネットの世界でも将棋が色濃く認知されている。その現実について一昨年著者も電王戦のコラムとともに、取りあげられていたことが印象的である。ちなみに本書の著者は今年1月末に他界した。将棋棋士としての人生以上に観戦記者、作家としての認知度が高く、将棋の知らない方々に文章でもって伝えた功労者と言っても過言ではない。同時に、多くの闘いを見続けたことで、本書のような一流棋士の知られざる側面を知ることができたと言える。

第1章「王者たちの系譜」
「王者」と呼ばれる方々を挙げると、戦前だと、木村義雄、升田幸三、大山康晴が挙げられるが、本書はその後の中原誠、谷川浩司、そして羽生善治の3名を取りあげている。もちろんそれぞれの考え方、方法でもって「王者」と呼ばれるようなチャンピオンロードを歩んできたのだが、その根底には何があるのか、本書はそのことについて取りあげられている。

第2章「華麗なる千両役者」
もちろん王者ばかりが目立つのが将棋ではない。千両役者といえるような、将棋界に無くてはならない存在の棋士もいる。本章ではそのような棋士を代表して現在でも活躍する加藤一二三、日本将棋連盟前会長として、そして棋士として辣腕をふるった米長邦雄、先日1000敗という節目でもって引退した内藤國雄、そして十四世名人木村義雄のご子息である木村義徳が挙げられている。

第3章「現代棋士の流儀」
本書で取りあげている「現代棋士」は、「羽生世代」にあたる方々である。いずれもタイトル保持の経験があり、なおかつ順位戦A級でも戦った、あるいは現在もなお戦っている棋士ばかりである。もちろん彼らは羽生に追いつき追い越さんとする勢いを見せ、将棋界を彩った方々である。

60年以上にわたり、様々な棋士を見続け、そして対局を見続けてきたからでこそ、著者でしか知らない側面があり、なおかつ、それを本書にしたためることができる。それを伝えるのも著者の役割だった。その著者が亡き今、それを伝える人は誰がいるのだろうか。