伝える本。―受け手を動かす言葉の技術。

私自身、ブログを通じて色々な文章を書いているわけだが、その言葉は何のためにあるのだろうか。一言でいったら「相手に伝える為のツール」と言える。その「伝える」ための言葉は、会話の中で出てくるもの、当ブログのように文章でもって伝えるものなどが挙げられる。

そういった言葉は伝える「送り手」から、「受け手」に向けて送っており、受け手に対して行動する様なツールであるが、実際にどのように伝えたらよいのかわからないという方もいる。本書は、そういった「伝える」こととはいったい何なのか、そしてどのようにして伝えたら良いのかについて示している。

第1章「「言葉不全」の時代」
「言葉不全」という用語は本書を読んで始めてみるが、これは誰にでも起こり得るという。何なのかと言うと、

「誰もが言葉を書いている、言葉を話している。しかし伝えてはいない。
 大声を出せば鼓膜や網膜には届く、しかし脳には伝わってはいない。
 「言葉なんて誰にでも使える」、そう信じた結果である」(p.24より)

という。つまり言葉を出しているのだが、本当の意味で相手に伝わっていないことそのものを表している。実際に自分自身も該当している部分も多く、書評を始めてから3~4年間は文章をうまく書こうということばかり意識しすぎて、「伝える」ことを軽視していた経緯がある。その言葉不全を脱するためにはどうしたらよいのか、本章では現状とともに伝えている。

第2章「言葉を疑え。」
言葉を鵜呑みにするほど危険なものはないと考えている。もちろん書評でも出てくる言葉を真っ先に疑い、その疑いの中で納得のいくものは共感し、そうでなければ切り捨てる。なので、自分自身も本章と同じように最初に「言葉」そのものを疑うことから始まる。とりわけよく使われている言葉であればあるほど疑うことが多くなる。

第3章「「ベネフィット」というキーワード」
「ベネフィット」と言う言葉は広告用語で、

「1.利益、恩恵。
 2.時間の短縮や作業の軽減など、その商品を使用することで得られる利便性や満足感。
 3.慈善のための催し」「大辞林 第三版」より)

とある。ちなみに本章では、

「それはつまり受け手になると、彼や彼女は「トク」をするということ。
 (中略)しかしトクの種類、トクの中身、トクする条件、ほかのトクとの差異は、言葉にしか伝えることはできない。そのトクは、広告では「ベネフィット」と呼ばれる」(p.150より)

とある。つまり受け手にとって有益なものだというのだが、広告だけに使われるのかと思われそうなのだが、実際の所、こう言った書評でも、会社で言えば企画書でも同じようにベネフィットが重要になってくる。

第4章「さあ、言葉を伝えよう。」
本章は実践編と言うことで日常会話はもちろんのこと、企画・会議などでどのように実践したらよいのかを提示している。

昨年・一昨年に、コピーライターの佐々木圭一氏の「伝え方が9割」という本が大ベストセラーとなった。その本を取りあげる以前に、そもそも「伝える」というのは何なのかと言うのにふと疑問が浮かんだため、本書を手に取った次第である。簡単に言えば「伝える」は相手にわかるように、と言うイメージを持たれているのだが、実際にはほかにも意味があるのでは、と思ったのだが、本書をよんで、「やっぱりな」という思いが強かった。