凡人起業―「カリスマ経営者」は見習うな!

10数年前の「起業ブーム」とまではいかないものの、フリーランスになったり、独立開業をしたり、あるいは会社を興したりする人は後を絶たない。それだけ起業に対する門戸が広くなってきている証拠である。

しかしいざ起業をするとなると尻込みをしてしまう人も少なくない。理由は様々であるが、カリスマ経営者を見て「この経営者にはなれない」と考えてしまうためである。私自身、起業をされている方を何人もお会いしたことがあるのだが、本書のタイトル通り「凡人」と呼ばれるような方々ばかりである。凡人でも起業ができること、凡人ならではの経営ができることについて提示しているのが本書である。

第一章「「独立開業本」に、必要な情報はない」
独立しようと考えたときにまずやる傾向として、「独立開業本を買って読む」「起業セミナーに参加する」などが挙げられる。しかしそういったものは一般的なノウハウしか身につけることができず、あまり役に立たないという。それ以前に起業する業界を決めて、狭い範囲での業界知識をたたき込むなどをする方が良いという。

第二章「必要な情報へのたどり着き方」
起業をするためには膨大な情報がいる問いわれるのだが、その中で必要な情報を探し、得ることもまた重要である。
それをどうやってやるのか、単純にパソコンの前で情報収集だけでは無理で、実際に外にでて指などで感じたものを得る、あるいは他人のやっていることを「まねぶ」などがある。

第三章「「業界の不思議」を見極める」
どの業界にも必ずといってもいいほど「不思議」と呼べるようなものがある。その不思議をどのようにしてつかみ、見極めるのか、それは伝えられている情報をキャッチする、そしてそのキャッチした情報を本当かどうか考えることが大切である。

第四章「「経営」という言葉に酔うな!」
「経営」というとサラリーマンによっては甘美な響きと受け取ってしまうのだが、それではいけない。もっとも経営自体、それなりの規模に達したときに、人や仕事の規模が増えたときに、あらゆる「財」を使って達成する術を現しているため、個人事業の場合は経営とは呼ばず「事業」と呼ばれている。もちろんこれは「一人株式会社」でも同様である。

第五章「税理士に経営指導を仰がない」
私自身、様々な場で税理士とお会いすることがあるのだが、その方々と一緒に仕事をする、あるいは仕事を依頼することは皆無に等しい。
私事はさておき、経営者の中には税理士に経営指導を仰ぐ方もいるのだという。しかし税理士は財務上の結果を持っているだけで、その結果論から経営指導を受けていても意味がないという。

第六章「実際の社長さんはこんな人たち」
著者も実際に様々な会社の方とお会いし、仕事をしたことがある。そのなかで実際の社長とはどのような人なのか、成功している方は「早くて、ニブい」のだという。

本書の著者は税理士であるのだが、それ以前に中小企業などを勤務し、さらにその前には教育関連で起業するも失敗した経緯がある。そのため本書には経営に関する自らの失敗談・体験談もふんだんに盛り込まれている。これから起業をしたい方は数多くあるが、けっして本書は「起業なんておやめなさい」という一冊ではない。むしろどういった起業を行えばよいのか、その一助となる一冊である。