手綱、繋がる思い—馬は体と心のセラピスト

皆さんは「ホースセラピー」をご存じだろうか。いわゆる「乗馬療法」というものであり、よく言われているものとして、

「馬と触れ合うことで何となく元気をもらうもの」(p.2より)

と言われている。あながち間違いではないのだが、それだけではなく、元気をもらうというよりも「癒し」と「つながり」を得ることができる。本書は実際にホースセラピーを行っている団体が、実際にホースセラピーとは何か、そしてどのような現状があり、どのような効果があるのか、そのことについて取り上げている。

第1章「ホースセラピーの現場」
馬との出会いによって良い効果をもたらした方々について取り上げているのだが、実際に精神的な病から立ち直った方もいれば、乗馬の楽しさを知った方、運動機能が改善した、半身不随から劇的に回復した方までいる。その状況を見ると、単純に馬と触れ合うことで「心を癒す」だけがホースセラピーではないということがよくわかる。

第2章「見守り、ともに進む ピルエットを支える人たち」
「ピルエット」とは本書で紹介されている、馬事普及協会の名であり、実際に栃木県に存在する。その「ピルエット」の中で活動しており、ホースセラピーを支えている方々について紹介をしている。

第3章「ホースセラピーを取り巻く環境」
ホースセラピーの認知度はまだまだ高いとは言えない。しかし「ホースセラピー」自体の歴史は長く古代ギリシャ時代から乗馬を通じた効果を証明したものが存在したという。しかしその概念は長らく受け継がれることがなく、ようやく発展をしたのは中世に入ってからのことである。
それから心身に障害を持った方々に対して乗馬を通じた健康維持やクオリティライフの向上を行う団体が生まれ、日本に誕生したのが2003年のことである。

第4章「科学的根拠を検証する人たち」
医学的な見地で証明したのは古代ギリシャ時代のヒポクラテスによって証明されたのだが、現代科学における証明を行っている学者も少なくない。本章では「科学」と銘打っているのだが、細かく見ていくと「獣医学」「作業療法」「医学」の見地から証明が行われている。

ホースセラピーの認知はまだまだ発展途上にある。しかしその「ホースセラピー」認知が広がること、そして医療としての「ホースセラピー」がこれからどのように広がっていくのか、その可能性を見出すきっかけとなる一冊と言えよう。