統計データが語る 日本人の大きな誤解

一昨年あたりからビジネス書コーナーに「統計」に関する本がたくさん出てきた。「ビッグデータ」と呼ばれるようなものの解析を行い、新しいアプローチをしたり、ビジネスモデルを構築したりするための分析法の一つとして「統計」が存在する。

しかしその統計をして行く中で「誤解」と思われていたものもある。本書は様々な統計データをもとにどのような誤解があるのか解き明かしている。

第1章「日本は世界一「小さな政府」―意外な日本経済の実像」
「小さな政府」とは、

「政府の役割や事業の肥大化が,経費の増大や非能率を生んでいるとの反省から,政府の規模を縮小し,財政経費を減らそうという考え方」「大辞林 第三版」より)

とある。経費の増大や非効率の状態であるのは今もそうなのだが、本章では公務員数規模や財政規模の観点から「大きな政府」なのか「小さな政府」なのかを取り上げている。その中で日本は「小さな政府」にあたるのだという。

第2章「本当に日本は多忙なのか―日本人の意外な生活実態」
日本は労働時間も多く、仕事のストレスも多い国と言われている。しかし統計を見ると労働時間の長さは長いものの世界一ではなく(2010年現在。ちなみに世界一は韓国)、なおかつストレスは少ないのだという。しかし睡眠不足は事実であるのだが、その要因は仕事というよりも身の回りの用事や趣味に時間を費やすことにあるのだという。

第3章「日本人は食べ過ぎではない―食と健康をめぐる誤解」
日本は「飽食」と呼ばれているのだが、はたして日本人は「食べ過ぎ」ているのだろうか、それについては年々減少傾向にあるのだという。もっともダイエットの傾向が強まっていることも一因としてあげられるのかもしれない。
他にも健康に関しては医療費とのコストパフォーマンスについても取り上げられている。

第4章「日本人はいまだに儒教国―日本人の価値観と幸福度」
日本人の価値観として、かつては「父権主義」だった。それが戦後になってそれが薄まっているといわれているが、統計を見たところまだまだ名残があるのだという。そのほかにも本章では儒教における教えがまだまだ日本に残っていることについて統計的な観点から取り上げている。

第5章「なぜ誤解が広がるのか―統計データの正しい使い方」
統計データは事実を表しているのだが、解釈によっては誤解を生んだり、都合の良いように扱われたりすることがある。そうしないために統計データはどのように扱っていけば良いのか、そのことについて伝授している。

本書のおわりに「真実は役に立つのか」という設問があった。一般論で言えばそうだと言うしかないのだが、本当の所都合の良いように真実をねじ曲げることがあるため、必ずしも「そうだ」と言えない。しかし統計データは「真実」を映し出している。その真実をいかにして付け加えや誤読や解釈をせずに表すことができるか、それは読み手の努力もあり、なおかつ統計を表す方々の課題と言える。