オーケストラ大国アメリカ

「オーケストラ」というと、ドイツやオーストリアなど西欧の国々が盛んに言われているのだが、実はアメリカも「オーケストラ大国」と呼ばれるほどであるという。これについてクラシックマニアであれば分る人もいるのだが、クラシックの「ク」の字も知らない方であれば本書に出会うまで気づくことはないと言える。

ではなぜアメリカが「オーケストラ大国」と呼ばれているのか、本書はその所以について取り上げている。

第1章「オーケストラ大国の礎」
アメリカで最も古い管弦楽団としてあるのが「ニューヨーク・フィルハーモニック」である。設立は1842年。偶然なのか不明だが、世界的に有名な「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」と同じ年にできたのである。また同時期にアメリカにてオペラハウスが建てられ、管弦楽団もできてきた。
しかし技術はそれほどでもなかったのだが、作曲家であり指揮者として有名だったグスタフ・マーラーがニューヨークのメトロポリタン歌劇場の音楽監督や、ニューヨーク・フィルの指揮者を歴任し、音楽の質の底上げを行った事により、西欧と引けを取らない程の技術力を誇った。

第2章「オーケストラ大衆時代の到来」
第一次世界大戦の後になると、レオポルド・ストコフスキーという「スター」と呼ばれる指揮者が誕生した。他にも世界的な指揮者のアルトゥーロ・トスカニーニも本章にて取り上げられている(トスカニーニの場合は第一次世界大戦前後両方で活躍したと言える)。

第3章「悲劇と栄光の指揮者たち」
その後も続々と世界的な指揮者がやってくるなど、「指揮界のキングメーカー」と呼ばれる時代があった。本章ではその時代で活躍した指揮者のうちアルトゥール・ロジンスキーオットー・クレンペラーなどが挙げられる。取り分けロジンスキーの場合はアメリカの栄光と、ヨーロッパでの悲劇の両方が描かれている。

第4章「スーパー・オーケストラの登場」
アメリカ人指揮者の中でも最も有名な人というと、「題名のない音楽会」の司会者であり、指揮者である佐渡裕の師匠のレナード・バーンスタインである。バーンスタインは指揮者としても評価を得ただけでは無く、「キャンディード」「ウエスト・サイド物語」などのオペラ作品を作曲した作曲家、さらには数多くの指揮者を育てた教育者としても評価は高い。バーンスタインが活躍した前後に、バーンスタインが常任指揮者だった「ニューヨーク・フィルハーモニック」さらに、ゲオルグ・ショルティ率いる「シカゴ交響楽団」などスーパー・オーケストラが出てきたことにより、アメリカが「オーケストラ大国」と呼ばれるようになっていったという。

第5章「オーケストラ大国アメリカの発展」
戦後からはCDなどの録音技術もできはじめたことにより、音楽も世界的に広められるようになった。そのCDを出すレコード・レーベルもまた「草刈り場」として世界のオーケストラを取り入れている。その状況は今もなお続いている。またアメリカのオーケストラの発展は今でも続いており、それらはシカゴにしてもニューヨークにしても地域に根付いていることも要因として挙げられる。

オーケストラはヨーロッパが音楽として盛んでアメリカが盛んではないかというと、決してそうでは無く、むしろ引けを取らない程盛んであると言っても過言ではない。ホールやオペラハウスにしても、オーケストラにしても世界的に有名になっている所は数多くあり、なおかつそれらは指揮者でもあり、楽団員でもあり、そして何より聴衆の支持があって、成長したと言われている。その軌跡が本書でもってよくわかる。

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