都市と消費とディズニーの夢―ショッピングモーライゼーションの時代

郊外に行くとショッピングモールがいくつか見かける。私自身も何度かそこに足を運ぶが、都市部とは違った魅力がショッピングモールに備わっている。そのショッピングモールは都市の再開発の意味合いもあり、著者は都市そのものも「ショッピングモール化」しているのだという。その「ショッピングモール化」とはいったいどのようなものか、本書では都市や消費などの観点から取り上げている。

第一章「競争原理と都市」
ショッピングモールというと郊外に建てられるイメージがあるが、それは1980年代以降、車社会の進行により作られたものである。2000年以降になってくると都市部ではコインパーキングがあちこちにでき、さらに公共施設やビルなどに売店やカフェ、さらには小売店などができるなど都市部の隙間を埋め合わせるようなことも起きている。
また、ショッピングモールができた事により「商店街」が衰退してしまったというのが挙げられ、現に当ブログでも「商店街再生の罠~売りたいモノから、顧客がしたいコトへ」にてそのことについて取り上げているが、実際にはショッピングモールのせいというよりも商店街そのものの「変化」を嫌ったこと、または間違った「変化」をしたことが挙げられる。

第二章「ショッピングモールの思想」
ショッピングモールの思想として挙げられるのが、本書のタイトルにある「ディズニーランド」の存在である。ディズニーランドはいわゆる「夢の王国」と呼ばれる所であり、「非日常」を楽しむ事ができる空間である。しかしそのディズニーランドとショッピングモールとはどのような関係があるのか、その一つとしてディズニーの産みの親であるウォルト・ディズニーが晩年に出かけていた場所がショッピングモールだったことが挙げられている。そしてそのショッピングモールこそ、ウォルト・ディズニーが為し得たかった「夢」が詰まっていたのだという。

第三章「ショッピングモールの歴史」
元々ショッピングモールの歴史はいつ頃から始まったのか。本章では19世紀半ばのパリにあった「パサージュ(街路)」から始まっている。この時代では「パサージュ」の辺りに多くの店が建ち並ぶ、いわゆる「商店街」や「アーケード街」といった概念がある。
それから百貨店ができ、20世紀に入るとアメリカでスーパーマーケットが誕生する。そのスーパーマーケットより少し早めにアメリカにて誕生したのが「ショッピングモール」であるという。

第四章「都心・観光・ショッピングモーライゼーション」
日本における「ショッピングモール」の誕生は定説として1969年に二子玉川駅近くにある「玉川高島屋ショッピングセンター」が始まりとある。当時は駅近くに誕生するのが主流だったのだが、それが郊外にできはじめ、90年代にはショッピングモールが急増していった。

ショッピングモールの発展は都市・郊外・観光などの観点で大きな影響を受けた。現在では都市・郊外かかわらずショッピングモールができはじめてきており、それがかつてあった近未来都市のあり方が現実化していると著者は指摘している。この先ショッピングモールがどのような道を辿っていくのか分からないものの、現在あるショッピングモールがいかにしてできたのかが良く分かる一冊と言える。