ルポ 電子書籍大国アメリカ


2010年に「電子書籍元年」と呼ばれ、それ以降電子書籍プラットフォームや電子書籍サイトが次々とでき、なおかつ電子書籍も次々と出てきた。しかし現在日本では電子書籍が浸透しているのかというと必ずしもそうとは言えない。もちろん浸透しているものもあれば、今もなお紙媒体を信用している人も少なくない。私も電子書籍をいくつか読んだことはあるのだが、玉石混交のような状態である印象である。
ではアメリカではどうなのかというと、本書のタイトルにもある通り「電子書籍大国」とまで呼ばれる存在である。本書はアメリカにおける電子書籍の現在について、購読側、さらには出版側の双方について、ニューヨーク在住のリテラリー・エージェントが取り上げている。

1.「未来型読書体験の幕開け」
日本人はブームに対し熱しやすく冷めやすいのだが、電子書籍はブームたり得たのかというと2010年の「東京国際ブックフェア」では大賑わいだった印象があった。しかしブームを経てどのように広がっていったのかというと最初に書いた通り、あまり浸透していない状況である。
ではアメリカではどうなのかというと、当初はiPad誕生により、電子書籍も広がりを見せ始めたのだが、日本ほどブームとはいい難かったのだという。ではその後はどうなったのかというと、日本と同じようにじわじわと浸透はしつつあるも、一気に紙の本が少なっていき、電子書籍になったわけではない。

2.「シリコンのようにしなやかなアメリカの出版社の対応」
日本と欧米では出版事情が異なるという。どのように違うのかというと、一例として、

「欧米の出版社では刊行日の数ヶ月前から見本刷りを用意し、書店や書評家、取次の仕入れ担当者に読んでもらい、評価を聞き、初版部数を絞りこんでいく。
 一方、日本では出版社側の思惑だけで初版部数を決める」(pp.40-41より)

とある。あくまで初版発行部数の話でありほかにも理由はあるのだが、それだけでも日本と欧米の違いがよくわかる。
さて本章にある「シリコン」であるのだが、アメリカには「シリコンバレー」という地域があるがそうではなく、出版社はシリコンのごとく形を必要に応じて変えることができる、いわゆる時代に応じて事業を縮小したり、企業買収をしたり、合併したりすることができることから「シリコン」と呼ばれている。

3.「アマゾンの本当の力」
アマゾンは今となってはアメリカのみならず日本も含め世界的に巨大市場を構築している。そのアマゾンが持っている強みは、書店にはない「バーチャル」ならではの力をフルに生かしているところにある。

4.「電子書籍の値段と印税」
紙の本を1つ出版したとする。出版したときに著者がもらえる印税はいくらかというと、1冊の本の定価に対してだいたい10%である。例えば本が1冊1500円だとすると、著者に入る印税は1冊あたり150円となる。(もちろん出版社によって差がある)
では電子書籍はどうかというと、製本や取次などがなくなるため印税の割合は上がるのだが、それでも出版社によって差があるという(15~30%くらいだという)。

5.「電子書籍で70%のおいしい印税生活が実現するのか?」
では本章のタイトルのように印税率70%でできるかというと、「セルフパブリッシング」という手段がある。これは出版社も取次業者もかけないで、たった一人で原稿を書き、製本を行い、電子出版を行う方法である。日本でも「セルフパブリッシング」のノウハウ本もあるのだが、実際のところ編集自体も自分でやらないといけないし、さらに販売促進まで自分自身の手でやる必要があるため、本の質も保証できず、なおかつ販売も紙以上に促進する必要があるため非常に難しいといえる。

6.「アップルが電子書籍にもたらした功罪」
電子書籍の糸口を切り拓いたのはグーグルやアマゾンばかりではない。iPadを生み出したアップルもまた電子書籍の展開に一役買ったものの、iPadなどを通じて電子書籍の未来をいかにして作り出すのか浮かんでこなかったのだという。

7.「本の未来をパワフルに模索している業界人たち」
著者はNYにてリテラリー・エージェントして日本の著作・著者を海外に広める役割をになっているが、その立場から電子書籍を含めた出版界、さらには本の未来を担う方々たちを紹介している。

8.「アメリカ電子書籍の最前線では」
アメリカにおける電子書籍業界ではどのような状況なのか、本章では版権やグーグル・エディションズなどをもとに取り上げられている。

9.「電子書籍化は“出版文化を守る”ことにならないのか?」
しかし電子書籍が広がることによって、「出版文化」はどうなるのかという議論がある。楽観的に見ている方もいれば、「出版文化は滅ぶ」という意見を持っている人もいる。電子書籍が現れたことによって出版文化は、変化は起こすものの、滅ぶというのはいささか暴言といえる。
また、電子書籍によって出版業界における変化も出てくるのだが、今の日本における出版業界の構造について著者も問題視しており、指摘している。

本書は「ルポ」と標榜しているのだが、取材でもってアメリカにおける電子書籍の現状を取り上げているが、ルポらしく様々なやりとりを行うのではなく、あくまでアメリカの現状について淡々と取り入れられつつ、日本・アメリカ問わず電子書籍や出版業界の問題点を辛辣に指摘している一冊といえる。

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