ファミリーレストラン―「外食」の近現代史

今となってはごく当たり前にある「ファミリーレストラン(ファミレス)」。元々レストランが家族と外食をすることから1970年代から始まったと言われている。そのファミリーレストランはどのようにして誕生し、愛されているのか、本書はそのことについて取り上げている。

第1章「ファミリーレストラン前史①―外食の誕生」
ファミリーレストランは家族のための「レストラン」であるのだが、元々「レストラン」が変化したものである。そもそも「レストラン」ができた事が「外食」そのものが誕生したことと連動しており、明治維新の文明開化とともにできたと言われている。また、同じ時期に大衆食堂などもでき、西欧の文化を取り入れつつ、「オムライス」や「カレー」など西欧文化を取り入れた独自の「和食」もできた。

第2章「ファミリーレストラン前史②―デパート食堂の隆盛」
デパート(百貨店)は、元々「呉服店」といった専門店から、様々な業態の店が一つとなり、誕生した。それが1900年代に入ってからのことであり、1920年代にはデパート食堂もできた。同じ時期にファミリーレストランで有名な「お子様ランチ」も誕生している。

第3章「ファミリーレストラン前史③―戦後の食の多様性」
ファミリーレストランの大きな下地ができたのが戦後になってから、「豊かさ」を追求した時代にファミリーレストランによくあるメニューが次々と生まれていった。それが「食の多様性」にもつながっていった。

第4章「外食文化の復興、高度経済成長、そしてファミリーレストランの誕生」
「外食文化」は明治時代にあったものの、戦争と共に寂れてしまった。しかし戦後になってから外食文化が再び生まれ、広がっていった。そして高度経済成長とともに、ものが豊かになり始め、食の多様性が広がり、ファミリーレストランが誕生した。

第5章「ファミリーレストランの時代」
本書で言う「ファミリーレストラン」の誕生は1970年7月の「スカイラーク(現:すかいらーく)」の1号店が誕生したことにある。ちなみに現在騒がれているマクドナルドが日本に進出したのが1971年だったので、ファミリーレストランとファーストフードのチェーンができたのも同じ時期と言える。それから様々な外食チェーンができはじめ、広がりを見せた。

第5章<番外編>「ファミリーレストランで食べる」
ファミリーレストランでは洋食をはじめ様々なものが食べられる。本章では著者自身が実際にファミリーレストランに赴き、何を食べていったのかを記録している。

第6章「「食べる場所」から「いる場所」に―1980年代」
ファミリーレストランは「食べる場所」から「ファミリーレストランにいる」という役割を担ったものも次々とできはじめた。またファミリーレストランの携帯も「ファミリー」中心のものから、デートスポットとして「カジュアル」な場となっていった。

第7章「大きく変化するファミリーレストラン、同時に変質する「ファミリー」の利用―1990年代」
さらに90年代に入ってくると、呼出ボタンができたり、値段もリーズナブルになっていったり、さらにドリンクバーができたりと、「いる」要素の強いファミリーレストランが次々と生まれた。

第8章「専門料理に特化するファミリーレストラン、次の「ファミリー」レストラン」
リーズナブル化した一方で焼き肉や寿司に特化した「専門料理」のファミリーレストランもできた。簡単に言えば「回転寿司店」や「ステーキハウス」なども誕生しており、「ファミリーレストラン」の役割も定義も変化してきている。

1970年に誕生した「ファミリーレストラン」は今もなおあるのだが、形や役割はチェーンによって大きく異なるようになった。しかし「ファミリーレストラン」の概念は「食」だけではなく、ある種の「コミュニティ」としての役割を担ってきたと言える。本書はそのことを気づかせてくれる一冊である。