戦略がなくなる日―戦略は立てた瞬間から時代遅れに

企業には多かれ少なかれ「戦略」を立てる。その「戦略」は自身の企業の現状、そして理想からの距離をどのようにして縮むか、あるいは競合他社・業種と勝つためにどうしたら良いのかというのを描いた作戦や実行方法を表したものだが、実際に状況は常々変化するため、戦略について同じものが常に通じるわけではない。

また本書ではそもそも「戦略」が通用するのかどうかさえ疑問に持っており、それについての欠点を指摘している。また戦略に代わるものとして「戦律」を提唱している。

第一章「戦略を立てても、どれだけ通用するのか、現代はもう、そんな時代になった」
技術にしても、市場にしても、変化は絶えず起こっているのだが、最近ではその変化の潮流が早くなっている状況にある。そのためいったん戦略を立てたとしても、ちょっとした変化により通用しなくなることがあるのだという。
ちなみに本書では「変更の利かないもの」「トップダウンで構築されたもの」「業種内のもの」の戦略に絞ってその欠点を指摘している。

第二章「戦略、戦略といわれるようになったのは、いつの時代からなのか」
ビジネス書などでも「戦略」と言う言葉がよく使われるのだが、ビジネスの世界で「戦略」が使われるようになったのはいつの頃なのかというのは気になってしまう。現存する史料の中では「孫子」があり、その時は「戦」にまつわることを指していた。その後、長きにわたって国家や戦争に対して「戦略」と言う言葉が使われ、第二次世界大戦後に、カール・フォン・クラウゼヴィッツにおける「戦争論」を経営の世界で流用した「経営戦略論」が誕生してから、ビジネスにおいて「戦略」という言葉が生まれた。
本章ではそういった歴史は語らずに、長期戦略における失敗例を取り上げている。

第三章「ほころび始めた戦略、戦略に潜む矛盾」
戦略は短期のものもあるのだが、中長期的に立てられるケースが多い。しかしその中長期の中で環境は変化するため、その都度戦略を見直す必要があるのだが、その戦略が根本的にほころんでしまったり、そもそも矛盾が生じてしまったりする事も少なくない。本章ではそのケースについて取り上げている。

第四章「戦略に代わるもの、後に来るもの。世界は「戦律」の時代へ」
そもそも「戦律」とは何なのか。それは「戦略」を「律する」、いわゆる環境の変化に応じて「調律」するという意味合いを持っている。ただ、実際に戦略は常々変化するものであり、戦略の変更も往々にしてあるため、すでに「戦略」という言葉の中に「戦律」が出来上がっているといっても過言ではない。

第五章「戦律を自らのものとするための秘策と行動の処方箋」
もちろん「戦略」を築いた後で、それが成功か失敗かを知ることの他に、何の要因で成功したのか、失敗したのかを検証する必要がある。本章ではその処方箋について取り上げている。

戦略は今も通用するのだが、使い方によっては本書にもあるとおり「時代遅れ」になってしまうようになる。本書では「戦略」に代わって「戦律」を取り上げているのだが、第四章にも書いたとおり、戦略の調律といわれる「戦律」自体は、戦略の中に組み込まれている状況にある。しかしいくら戦略を立てようとも、変化に応じた修正・調律は必要である事は本書を通じて良く分かり、戦略についてきちんと時代や環境に即した変化を行っていなければ「策士策におぼれる」というような形になってしまう。本書ではそれについて警鐘を鳴らしている。