ホワイト企業~サービス業化する日本の人材育成戦略

巷では「ブラック企業」なるものが出てきており、社員を使い捨てにするような会社もあるのだという。もっとも会社も戦力となる様な人材が欲しくなり、会社によっては人材育成ができない、あるいは人材育成の変化に対応できない企業もある。

話は変わるが「ブラック企業」の対照となるのが「ホワイト企業」である。今までは「ブラック企業」についてクローズアップされたことはあったのだが、「ホワイト企業」について取り上げた本はほとんどなかった。本書は「ホワイト企業」と言えるモデルケースを紹介しつつ、今日本の企業が抱えている人材育成の課題についてあぶり出している。

第Ⅰ部「なぜ日本では二十代が育たないのか」
第1章「これまでの人材育成は通じない」
本章に入る前に本書にて取り上げている人材育成が通用しなくなった、もとい若者が育たなくなった原因について取り上げる。

1.競争環境が厳しくなり、人材育成に時間とお金をかける余裕がなくなった。
2.仕事内容が変化した。
3.職場環境が変化した。
4.若者自身が変化している。
5.産業構造が変化している。(いずれもpp.16-18より)

2.~5.は主に様々な「変化」に対応できていないと包含してしまい、1.は企業自体の現状がそうさせてしまったのかも知れない。
本章の話に戻るが、そもそも人材育成が通じなくなった要因として上記の2.~5,にある「変化」に対応できなくなったというのもある。またその「変化」に対応した人材育成を行っても、それが本当に若者や産業構造に対応した「変化」というとズレている場合もある。他にも働くことの中でも重要な部分である「やりがい」が見いだせなくなったことから20代で辞めていく人もいるのだという。

第2章「サービス業化した日本の課題」
日本の企業の多くは「サービス業」となっており、本章にある「サービス業化した」というのはしっくりくる。しかし「サービス業」と一括りにしても、専門的なものから汎用的なもの、さらには個別的なサービスから全体的なサービスを行うものまで様々である。
サービス業の中には「マニュアル」としたものもあれば、マニュアルを作らないところもある。
様々とある「サービス業」の中でそれぞれの「課題」が存在する。本章ではサービス業のケース毎に課題をあぶり出している。

第3章「日本的発想からの脱却がホワイト企業をつくる」
「日本的発想」とあるが、どういうことかと言うと、

1.分業発想
2.精神主義
3.序列概念
4.人物評価固定化というジェネラリスト発想(p.108より抜粋)

とある。中でも1.は簡単に言って「女性は家庭、男性は仕事」という概念、3.は年功序列というよりも先輩から後輩に教えるOJTなどが挙げられている。上記の4つの考え方をいかにして脱却するか、そしてその代わりとなる発想とは何か、そのことについて取り上げられている。

第Ⅱ部「会社を変える人材育成戦略」
第4章「人材育成力を高める取り組み」
第Ⅱ部では第Ⅰ部であぶり出した課題をもとに、どのような解決をして行けば良いのか、実際にホワイト企業と呼ばれる人材育成のモデルケースをもとに紹介している。

第5章「ホワイト企業の条件」
本章ではホワイト企業の条件として「5分野15項目」と整理した上で、それぞれの項目についてどういった人材育成を行ったら良いのか、具体的に提示している。主に「人材像」
の他に「ビジョン」や「仕事」「コミュニケーション」が挙げられる。

第6章「社会として何ができるのか」
企業として人を育てることが大事になってくるのだが、その上でどのようなことが経営者にとって、人材育成にとって、ひいては社会にとって大切なのか。それは企業によって、あるいは地域によって異なるのだが、変わりゆく社会・地域・業界の中で企業は、そして人材育成はどのように「変化」して行くべきか、そのことについて考える必要がある。

「ブラック企業」という言葉はよく聞くものの、対照的に「ホワイト企業」というのはあまり聞かない。しかしその「ホワイト企業」は経営者が作るわけでもなく、会社単位で作るわけでもなく、社員それぞれがつくる、最も「ホワイト企業」の肝には「人材育成」であることが本書で言われていることである。