嘘と絶望の生命科学

本書が出版されたのは昨年の7月。この時期に起こったものとして「STAP細胞」をめぐる騒動が挙げられる。論文の掲載写真が別の実験から取ってきて貼り合わせたものであること、そして論文に大量のコピペがあったことが明らかになったという。その件で理研の管理体制が問題視されただけではなく、遺伝子・細胞研究の権威だった笹井芳樹京都大学再生医科学研究所教授が自殺する痛ましい出来事があった。その一連の出来事のみならず、バイオ研究をはじめとした生命科学に関する研究には様々な「闇」が存在するという。本書はその「闇」を暴きつつ、これからの生命科学研究はどうあるべきかそのことについて提言している。

第1章「「奴隷」が行うバイオ研究」
バイオ研究が日本の理科大学で盛んになってきているのだという。とある番組にてある精神科医が、精神研究所が廃止され、廃止されたところにバイオ研究が次々と建てられてきているというのを聞いたことがある。その広げられたバイオ研究では、研究者も多くなってきているのだが、実態として細胞を培養したり、機械的にピペットを握ったりするなど、いわゆる「ピペット奴隷」「ピペット土方」と呼ばれる人が出てきたのだという。そういった方々の多くは若手研究者たちであるという。
その原因として研究者の人口は増えてはいるものの、組織そのものの高齢化・硬直化にあるのだという。

第2章「ブラック企業化する大学院」
第1章が原因にもあるのだが、大学院のみならず付属している研究所に勤める若手研究者が、単純作業を長時間、なおかつ長期間にわたって続けられたことから、あたかも「ブラック企業」ならぬ「ブラック研究所」「ブラック大学院」という烙印を押されるようなこともあったという。ちなみに研究時間のこともあるのだが、大学院は修士・博士を生み出す場であるのだが、そういった肩書を乱造している現状についても本章にて言及している。

第3章「カネが歪めるバイオ研究」
大学によっては「産学連携」の概念があるように大学と企業が連携して、研究したものについて実際のビジネスの場で役立てている大学も多い。
ではバイオ研究などの場ではどういったものなのか、「産学連携」もあるのだが、国から基礎研究などの研究費を捻出しているというのも「カネ」と関わっている。特に研究費に関しては大学や研究所との間で「獲得競争」が起こっているのだという。それが「カネを歪める」要因の一つなのだという。

第4章「研究不正―底なしの泥沼」
研究不正というと、最初にあった小保方晴子の件があるのだが、それは「砂上の楼閣」に過ぎないという。しかしそのほかにある研究不正としてデータのねつ造というのもあるのだが、ほかにも研究の手抜き、さらには研究記録管理の不徹底、研究方法の変更などが挙げられるという。

第5章「バイオを取り戻せ」
著者もバイオ研究を行い、身を立てることを夢見ていた。しかし紆余曲折を経て研究そのものをやめることになったという。その経緯について綴るとともに、自らの経験をもとに、日本におけるバイオ研究の世界の構造を変えることについて具体的に示している。

本書のあとがきには前述の小保方晴子と著者とはある関係が存在しているのだという。そのこともあって、著者はSTAP細胞に関わる出来事について他人事とは言えなかったこと、そしてその出来事のほかにも逮捕者が出た事件もあったということもあり、本書を上梓されたのだという。そのことを考えると日本における科学研究は世界的にも先進的であるのだが、その裏には澱が存在していることを知らしめたのだが、正直言うとほかにもあるのではと勘ぐってしまう。

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