人間の煩悩

元々「煩悩」とは、

仏教の教義の一つで、身心を乱し悩ませ智慧を妨げる心の働き(汚れ)を言う。Wikipediaより

という。人間誰しもが存在するものであるのだが、煩悩と上手く付き合っていくか、あるいは抵抗していくか、というのは人それぞれとも言える。本書は長きにわたる人生の中で、人間の煩悩とは、人生とは何かを自らの境遇とともに綴った一冊である。

第一章「人間とは」

人間とはどのような存在なのか、人間社会とはどのような存在か、あるいは人間同士の関わりとはどのようなものだったのか、著者の周りの盟友・悪友たち、さらには作家仕事の仲間たちなどの人間模様がどうであったかなどを赤裸々に綴っている。

第二章「人生とは」

人生には喜怒哀楽や損得、さらには正負など対極をなす様々なものが出てくる。もちろん順調にいくこともあれば、うまく行かないこともザラにある。90年以上生きている著者にとってはそのようなことは日常茶飯事である。

第三章「男と女とは」

男女関係は時代と共に変化している。しかしその「変化」の在り方は人それぞれであり、著者は多くの男女関係を紡いできた。結婚での男女関係、友人や恋愛における男女関係、さらには男女平等について著者なりの言及が行われている。

第四章「子供とは」

著者にとって子どもとはどのような存在なのか、そして子どもの教育はどうあるべきか、教育に関連していじめやしつけ、良心、さらには将来はどうしたら良いのかなどを取り上げている。

第五章「あの世とは」

あの世は本当にあるのかどうかについては宗教や価値観などによるため、ここでは言及しないのだが、著者自身の「死生観」はどうであるのかを綴っている。

第六章「長寿とは」

かつては長寿は縁起が良いものとされてきた。なぜ「されてきた」かというと、この頃「暴走老人」をはじめとしたお年寄りに関してのトラブルが急増しているというニュースがあった。ニュースを見てみると、果たして長寿は良いものなのかという疑問が沸いてくる。

本書は自らのエッセイのうち、選りすぐりの部分を一部加筆修正して取り上げている。本書が出版された当時は92歳。その時代の中でどのような変化があったのか、そして作家として、人間としての人生はどうであったのか、長い人生の生き字引となる一冊と言える。