弁護士をめざして56歳からの挑戦―司法試験一発合格

「チャレンジに年齢は関係ない」という言葉が存在する。この言葉は正しいように思えて、チャレンジの対象によっては間違っているものもある。とはいえ年齢を理由にしてチャレンジをやめてしまってはもったいない。
本書は引退を目前にしたサラリーマンが還暦前に弁護士を志し、司法試験を経て、第二の人生として弁護士になっていくという物語である。

第1章「司法試験受験決断まで」
著者はサラリーマンになってから、労働組合の役員を長らく務めた。その労働組合でのなかで様々な労働運動にも関わり、労働と政治のことについても接してきた。その活動が弁護士を志した要因の一つである。そしてもう一つは著者の親族におけるある出来事により、弁護士が活躍したことにより、弁護士になろうと決めたのである。

第2章「大転換」
弁護士になることを決めた著者は法科大学院に入学した。もちろんサラリーマンとの「二足わらじ」という形である。二足わらじとなると両立が非常に難しいのだが、その両立の難しさの中でいくつもの「壁」が存在した。著者はその「壁」も一つ一つ乗り越えながら、チャレンジを進めていった。

第3章「戦いの記録」
弁護士になることを志してから、法科大学院に入り、そして司法試験を受験するまで3年半もの月日を費やした。その3年半の戦いの中には記憶力から体力にかけて様々な力を鍛え上げることもあれば、移動手段も変え、移動中もまた勉強につぎ込むようになり、仕事もしながら、終わった後は司法試験に向けての勉強に全力を注ぐことになった。

第4章「挑戦の裏にあったもの」
しかしその全力を注ぐことになった際の犠牲も存在した。まさに「身を削る」挑戦だっただけに、著者の身にも様々なガタが来たのだという。ほかにも著者の身内の異変もあった。

第5章「チャレンジャーに伝えたいこと」
本書は自らの挑戦を記録し、そして新たに挑戦していく上での「指南書」とも言える一冊だが、あくまで出版元は「法学書院」。弁護士や検事など法曹の仕事を志し、日夜勉強に励んでいる方々に向けてのエールと呼べるところである。

第6章「司法修習を振り返って」
司法試験に合格しても、「司法修習生」として修習を行うものである。修習の内容は法律の講義はもちろんのこと模擬裁判を通じて実際に法律を使って弁論を行うこともある。しかも修習中にも試験は存在しているのだが、その厳しさがありありと伝わってくる。

還暦目前になって新たな人生を模索する方も少なくない。本書の著者のように過酷なチャレンジを経て、第二の人生を手に入れた方もいる。第5章にも書いたのだが、本書はあくまで法曹の仕事を志す方々を対象にしているのだが、そもそも「自分は年だから…」と思っている方も是非読んでみると良い一冊と言える。